「お金を払っているんだから当然」「お客様は神様だろ」――宅配便の遅れや些細なミスに対し、思わずそんな感情を抱いてしまった経験はないだろうか。
しかし、その言葉を免罪符のように振りかざす人ほど、自らの“人間としての小ささ”を露呈させてしまっているという。物流ライターの二階堂運人氏の著書『宅配業界ぶっちゃけ話』(清談社Publico)より一部抜粋・再構成してお届けする。(全2回の1回目)
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この人はいつから神様になったんだろう
玄関のドアが開く前に、もう声が聞こえていた。
「遅いよ、こっちは時間指定してるんだから」
ドアが開いた瞬間、荷物を差し出す前にまず頭を下げる。前日の台風で、その日の荷物の到着が大幅に遅れていた。頭を下げたまま謝罪の言葉を並べていると、頭上から降ってきたのが、「どんなことがあろうと、約束通り届けるのが仕事じゃないの? それに、お客様は神様という精神が足りないんじゃない?」という、問いかけなのか念押しなのか、判然としない一言だった。
「申し訳ございません」以外に返せる言葉はない。だが、頭の中では、まったく別のことを考えている。この人はいつから神様になったんだろうと。
これを読んでいる人の中にも、一度くらいは似たようなことを口にしなくとも、心の中でかすめた記憶がある人がいるかもしれない。
宅配便に限らず、飲食店でも、コールセンターでも、「客なんだから」「お金を払っているんだから」という言葉。悪気があって言っているわけではないのだろうが、少し苛立っていて、その苛立ちに理由をつけたくなっただけなのだと思う。誰しも一度くらいは同じことをしているはずだ。
この話は、配達現場だけの愚痴として読んでもらうつもりはない。むしろ、誰の中にも、ふとした瞬間に神様の椅子に座ってしまう瞬間があるという話として読んでいただきたい。
