「神様扱い」されていることに客自身が気づかない

 そして、本当に興味深いのはここからだ。「お客様は神様です」と口にする客ほど、実は自分が神様として扱われている実感を持っていないことが多い。矛盾しているように聞こえるかもしれないが、これは筋の通った話でもある。なぜなら宅配業界は、この言葉が生まれるずっと前から、客を実質的に神様として扱ってきたからだ。

 時間指定は無料。再配達も無料。置き配の指示も、インターホンを鳴らす回数も、雨の日にどれだけ配達員は濡れながら荷物を守るかも、すべて客の希望に合わせて調整されてきた。送料無料という文化そのものが、運ぶ側の労力を対価ゼロで引き受けることで成り立っている。

写真はイメージ ©AFLO

 つまり客はすでに十分すぎるほどの厚遇を受けているのに、それがあまりに滑らかに「当たり前のサービス」として溶け込んでしまっているせいで、本人にはそれが見えていないのだ。

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