「新品と交換しろ」「土下座しろ」――。些細なズレや言いがかりで激怒し、スマートフォンで謝罪姿を撮影する客たち。社会問題化するカスタマーハラスメントの現場で、配達員たちはいかにして尊厳を削られているのか。
宅配ドライバーたちが直面した生々しい「モンスター客たちの記録」を、二階堂運人氏の著書『宅配業界ぶっちゃけ話』(清談社Publico)より一部抜粋・再構成してお届けする。(全2回の2回目)
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配達員をやっていれば、誰しも一度は「モンスタークレーマー」と呼ばれる存在に出くわす。今思い出しても冷や汗が出るようなクレームをいくつも経験してきた。以下に挙げるのは、すべてが自分自身の身に起きたことというわけではない。当時、現場で顔を合わせた同業者や同僚たち、そして、現在も現場で戦っている後輩たちの生々しい体験談も含めての実録だ。
「これ、弁償してもらえますよね」
雨の日の配達がある。防水対策はもちろん施していたが、記録的な豪雨の中では、段ボールの角がわずかに湿ってしまうことがあった。中身への被害はまったくなく、内容物は無事だった。それでも、玄関先で箱を受け取った客は、角の染みを指先でなぞりながら、みるみる顔色を変えていった。
「新品と同じ状態で届けるのが当然でしょう。これ、弁償してもらえますよね」
こういうときは、その場で中身のものが大丈夫か「現認」をする。思った通り、中身には影響はなかった。しかし、受取人は、「今すぐ新品と交換してください」「この場で始末書を書いてもらえますか」、挙げ句にはスマホのカメラをこちらに向け、「これ、SNSに上げますからね」と言い放った。
