占い師の細木数子の人生を題材にとりあげ、Netflixで今年(2026年)4月に配信がスタートしたドラマ『地獄に堕ちるわよ』では、ドラマの重要な転換点として戸田恵梨香演じる細木と、戦後歌謡界を代表する人気歌手・島倉千代子の愛憎劇が描かれた。そこで島倉を演じたのが、今月20日に30歳を迎えた三浦透子である。(全3回の1回目)

三浦透子(2026年Netflix『地獄に堕ちるわよ』配信記念イベントで) ©時事通信社

 三浦は歌手でもあるだけに、劇中でも吹き替えではなく自ら歌唱し、演技もモノマネではなく声やしぐさなど雰囲気を寄せることで見事に島倉千代子になりきっていた。とりわけ強烈な印象を残すのは、島倉が知人の借金を肩代わりしたために大勢の債権者が押しかけるなかで歌謡ショーに出演する場面だ。

 開演直前まで不安と緊張からうろたえていた彼女だが、いざ幕が上がり、一礼して頭を上げるや表情を一変させ、歌い出すとともにたちまち歌の世界に入り込む。その姿は官能的ですらあり、ゾクゾクさせられた。

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ひとり芝居で見せた「身も心も削る」演技

 その三浦がこの夏、初めてひとり芝居に挑戦すると知って、筆者はさっそくチケットを取った。演目は、オーストラリア出身の劇作家で弁護士でもあるスージー・ミラーの作品『プライマ・フェイシィ―私の声を聞いて―』で、三浦が演じるのはテッサ・エンスラーという敏腕弁護士の役である。

 テッサは性暴力事件の裁判のたび被告の男性側につき、被害を訴えた女性たちを冷徹かつ合理的な反対尋問により打ち負かしてきた。しかし、同僚の男性に性暴力を受けたことから彼女の立場は一転、被害者として法廷に立つ展開となり、自分がよりどころとしてきた法制度がいかに女性に対し不平等なものなのかを容赦なく思い知らされる。

2026年7~8月に上演された『プライマ・フェイシィ―私の声を聞いて―』

 劇中では、テッサが被害を受ける場面、さらにそれを法廷で証言する場面も当然ながら出てきた。そのうえ、今回の公演の会場には小劇場(東京ではザ・スズナリ、筆者が観た大阪では近鉄アート館)が選ばれたため、観客たちは舞台上の三浦を至近距離で固唾を飲みながら見守ることになった。観るにつけ、演者が身も心も削られそうな役で、つい心配になるほどだった。

演出家はすぐに三浦の起用を決めた

 しかし、それは三浦も承知の上でこの役を引き受けたのだろう。事実、彼女は今回の公演のパンフレットに寄せたメッセージで、《責任を持ってこの作品を届けるためにも、まずは自分の心身の健康を保つことを強く意識しています。家族と過ごす時間も大事にしながら、最後までやり遂げたいです》と抱負を述べていた。心身を壊さないよう万全の態勢を整えながらも、これは自分がやるべき仕事だという使命感がうかがえる。

初めての一人芝居に挑んだ(シスカンパニー舞台製作公式X@sis_japanより)

 演出家の栗山民也は、戯曲を一読してすぐテッサと三浦が重なったことから起用を決めたらしい。舞台『ロスメルスホルム』(2023年)で一緒に仕事をしたあと、栗山から「次はひとり芝居だから」と伝えられた彼女は、それから本番を迎えるまでの2年間、頭の片隅にはずっとこの作品があり、胃が痛くなるほどで、「早くこの作品が終わったあとの未来に行きたい」と思い続けてきたという。