すべての人に、「感謝、感謝、感謝!」
腹をくくったことで、次々と「代打」も起用することとしました。神宮球場・スタジアムDJとしておなじみのパトリック・ユウさんにはビールを呑みながら打診。すぐに快諾をいただきました。また、「同業者はイヤだ」と思っていたけれど、長年にわたってスワローズの取材を続けている「菊田康彦さんの原稿を読みたい」と思って、代打登場をお願いしました。これがあったから、日本シリーズでは、同じく同業者である菊地選手の起用にも抵抗はありませんでした。さらに調子に乗って、「実は文才があるのでは?」とひそかに思っていたOBの今浪隆博さんにも執筆依頼をし、真夏の神宮球場では、つば九郎さんにも原稿のお願いをしました。
みなさんが、それぞれ個性的なコラムを書いてくれたことで、文春野球ヤクルトはかなり華やかになりました。今季開幕当初から、僕の頭の中には、『月刊文春スワローズ』という架空の雑誌の構想がありました。巻頭グラビアがあって、メイン特集があって、連載読み物があって、4コママンガがあって、袋とじがあって……。今年の「文春野球ヤクルト」は架空の月刊誌を作っているような気持ちで取り組みました。それは「監督」というよりは「編集長」に近い感覚です。編集長としては、それぞれの書き手が個性的な文章をしたためてくれたことを心から感謝します。しかし、その一方では、「本来は書き手であるはずの僕がやるべき仕事なのか?」という自問自答を常に抱いていたのも事実でした。
そして、ペナントを制し、CSを勝ち上がり、日本シリーズへと進出しました。真中さんは本業の解説の仕事が忙しく、伊藤さんは東北楽天ゴールデンイーグルスへのコーチ就任という去就問題があり、ポストシーズンに出場できないという不測の事態に陥りました。それをいかに他球団に悟られないようにするか、情報統制、報道管制を敷くのが大変でした。これだけの巨大戦力を有して日本一になれなければ、当然、監督の進退問題に発展することでしょう。この頃、僕のユニフォームの内側には常に「辞表」が忍ばせてありました。
こうした事情から、ポストシーズンは「代打中心」の用兵となりました。一応、「もしものために」と、僕自身は4本の原稿を書き終えていましたが、事前に用意した原稿は、上田剛史選手について書いた一本しか発表する機会はありませんでした。代打のみなさんがクオリティの高いコラムを、きちんと締め切り通りに仕上げてくれたからです。中には何度も書き直しをお願いし、朝方まで作業してくれた方もいらっしゃいました。本当にどうもありがとうございました。
……さて、「来年の抱負は?」と聞かれても、今は何も答えられません。今年と同じことをしても、それは自己模倣であり、劣化コピーであり、インパクトのあるものとはならないでしょう。来年の文春野球はどうなるのか? 監督も含めた布陣はどうなるのか? それは、神のみぞ知るということでしょう。
いずれにしても、一年間、どうもありがとうございました。代打も含めたすばらしきチームメイト、日々HITボタンを押してくれた読者のみなさま、他球団の監督、コラムニストの方々、運営スタッフの面々、すべての人に感謝、感謝、感謝!(←1993年日本シリーズで優勝した際の野村克也監督の勝利監督インタビューのマネ)。昨年も含めたこの2年間、本当にどうもありがとうございました! ……とにかく疲れました。
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