一方、弁護側は「犯行時は心神耗弱状態にあり、行動制御能力が著しく減退していた」と主張した。
犯行動機は歪んだ憎悪
裁判ではその動機と犯行に至るまででの経緯について、検察側から明かされた。検察によると、被告は高校卒業後、自衛隊に入隊。しかし3年足らずして依願退職している。主な理由は人間関係だった。練馬駐屯地の第一偵察隊で厳しい上下関係に悩まされたという。自衛隊を辞めたあと、被告は自分を虐げた自衛隊の隊員を殺したいと思い始める。やがて自らが適応できない社会に恨みを募らせ「人」に対する殺害願望を抱くようになった。
そこで人を殺害できるフランスの外国人部隊への入隊を望み実際に渡仏。しかし入隊することなく1週間で帰国した。その後、2歳年上の兄と同居し、派遣会社に入社したものの、人を殺したいという感情は消えなかった。
派遣会社を辞め2度目の渡仏。しかし、自ら兄に帰国したいと連絡し、兄もこれに賛成。結局、入隊することなく、再び帰国した。このころから被告の兄に対するいびつな憎悪が渦を巻いてくる。被告は部隊へ入隊できなかったのは、兄が帰国に賛成したからだと考え、兄を逆恨みするようになった。
こうしたなか、離婚していた被告の父親が亡くなり、兄が委託した弁護士から被告に
遺産約1200万円が相続できるとの連絡があった。遺産が入ることを見越した被告は仕事を辞めた。しかし、遺産相続の手続きは思うように進まず、いつまでたっても入金はなかった。
「兄が自分の人生を踏みにじった」と復讐を決意
被告は手続きが進まない原因が兄にあると思い込み、「兄が自分の人生を踏みにじった」と考え、復讐を決意する。兄の大切な人間を殺害して、兄に生きながらにして苦痛を与えようと考えるようになり、兄の大切な人間を殺害するなら、自分を苦しめてきた社会一般の「人」も殺害しようと考えるようになった。
弁護士から6、7月での相続分の入金の見込みがないと聞いた被告は事件の2カ月ほど前、殺人計画の実行を決意する。それは、兄にとって大切な祖父母と叔母、そして母親の4人を殺し、虚偽の通報をして駆け付けた警察官を殺害した上で、拳銃を奪い、近隣のスーパーマーケットで無差別殺人を実行するという計画だった。その後、景色のきれいな鳥取市の海岸まで移動して自殺するまで想定していた。