昨年8月に発売し、重版を重ね現在累計5万部となっている『浪費図鑑ー悪友たちのないしょ話ー』(編著・劇団雌猫/小学館)。その第2弾『シン・浪費図鑑ー悪友たちのないしょ話2ー』が、10月17日に発売された。アニメ、映画、スポーツ選手、アイドル、整形……様々なジャンルのオタク女性たちが、趣味にお金を“溶かす”様子が完全書き下ろしの匿名エッセイで綴られている。その中から「タカラヅカの娘役」に浪費している20代後半の女性のエッセイを、特別に掲載する。

●著者プロフィール ツキノワグマさん
29歳。ライター。社会科見学のつもりで赴いた『ベルサイユのばら』公演にて、宝塚歌劇団の娘役・愛希れいかさんにひとめぼれ。

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月組トップ娘役、愛希れいかさんへの恋

 雷に打たれたように恋に落ちた。雷としか言いようがない。恋としか言いようがない。その一瞬のことは、これからずっと覚えていると思う。

 月組トップ娘役、愛希れいかさん。初めて目にしたその瞬間から、大好きです。

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宝塚歌劇団月組娘役トップの愛希れいかさん ©時事通信社

 初めて宝塚を見たのは2012年、そろそろ劇団が百周年を迎えるという頃だった。「せっかく日本に生まれたんだしタカラヅカ、1回くらい見てみたいな~」なんて軽い気持ちで社会科見学のように劇場に赴いた。結構、面白かった。代名詞の派手なお化粧、観る前はそんなに得意じゃない気がしていたけど、デコラティブでゴージャスな世界観を構成するものなんだと思えば納得できた。男役さんは「本当に女性なんです!?」とつい思っちゃうくらいキメキメにかっこいい。お芝居とショー両方を楽しめるのもお得感がある。こんな感じなのか。数時間で非日常をパッと楽しめていいなぁ。気が向いた時にゆるっと劇場に通ううちに、もうすぐ『ベルサイユのばら』が上演されることを知った。ベルばら! そうだ、宝塚といえばベルばらじゃないか! そうしてチケットを取ったのが、月組公演『ベルサイユのばらーオスカルとアンドレ編ー』。この演目が私の運命を変えた。

『オスカルとアンドレ編』は、その名の通り、2人が主役だ。男装の麗人オスカルと、その幼馴染アンドレ。まぁ普通に考えて、その2人の男役のどちらかを好きになると思った。龍真咲さんと明日海りおさん、どっちも違う美人で素敵だ。迷っちゃう。宝塚が好きな友人たちと「あなたは明日海さんじゃないかなぁ」「えー、真咲さん好きになってほしい!」なんてきゃっきゃと話して期待を高めた。

「私が好きになるのはこの人だ!」

 漫画で知っているストーリー通りに話は進む。原作を知っていると流れを追いやすくていい。中盤、舞台袖からローズピンクのドレスに身を包んだ1人の娘役さんが出てきた。髪型も衣装もかわいい。

 セリフを発した瞬間に、電撃が走った。

 この人だ。私が好きになるのはこの人だ!

 彼女が舞台にいる間ずっと、1秒残らず目で追っていた。どんなに端にいても、大勢のうちの一人でも。集中しすぎて他のセリフが聞こえないレベルに。

 ロザリー役、愛希れいかさん。「この子、好きかも」じゃなくて「そうか、この人だったのか!」と思った。やっと出会えた。前からわかってた気さえした。ミーハーなので今までいろんなアイドルや俳優を好きになってきたけど、こんなに劇的な落ち方をしたのはあとにも先にも初めてだ。

©iStock.com

 人物相関図を見ると、ロザリーは「オスカルにとって妹のような存在」とある。「妹のような」って。恋人ではない。妹ですらない。正直登場シーンは多くない。普通、トップ娘役はヒロインとしての見せ場がちゃんとあるのだが、この演目はそうではないので、特に出番が少ないのであった。前述の友人たちに「愛希れいかさんを好きになった」と伝えたら「そこ!? ベルばらで!?」と返ってきた。ほんとだよ。オスカルでもアンドレでもなくロザリーを一番力を入れて見つめることになるとは。

 好きな人ができると世界は輝く。終演後、ふわふわになった頭で彼女のブロマイド写真をショップにあるだけ全種類買った。宝塚にハマるとしたら、男役のかっこよさにめろめろになると思ってたよ。違った。まさか娘役さんを好きになるなんて!