どうしてちゃぴさんに一目惚れしたのか
どうしてちゃぴさんに一目惚れしたのかあらためて考えると、彼女が私の「理想の女の子」だったからだと思う。すらりとした体、白い肌、小さな顔、大きな目。完璧な美人ではないけれど、愛嬌がある。笑顔がかわいい。笑うと目が細くなってなくなるのも大好き。長身の身体を目一杯生かしたしなやかなダンスはとてもきれいだ。素顔はちょっと口下手でテンパりがちなのに、舞台の上では少しもぶれない。女優としてひりひりするほど気高く美しい。そのくせ最後のカーテンコールでは、目を細めて口を大きくあけて少女のように笑う。数分前までの役に入った姿と違いすぎる。そのギャップに毎回また恋に落ちてしまう。知れば知るほど、好きなところが増えていく。
宝塚歌劇において、主役は男役だ。揺るぎない。パブリック・イメージとしてだけでなく、実際に各組一人ずつの男性トップスターを中心に、“彼”のために世界は回る。娘役は演目によっては添え物……とまでは言わないけれど、あくまで誰かの妻や恋人であることに重点が置かれていることもある。私は、男役の皆さんの凛々しさも大好きだけど、頭のてっぺんから足の先まで素敵な女の子であるために日々努力しているであろう娘役さんたちも同じくらい“格好いい”と思う。自分はどう頑張っても彼女たちのような女の子にはなれないけれど、だからこそ磨き上げられた美しさに敬意を払わなくてはって思うのだ。
ちゃぴさんは、そんなたくさんのピカピカ輝く娘役の中でも、限りなく私の理想の女の子だった。大好きなお姫様で尊敬するヒーローだ。かわいくあることは、格好いい。その2つは両立する。ちゃぴさんはそれを教えてくれた。
2018年、11月――ちゃぴさんの退団に寄せて
宝塚の美しさのひとつは、終わりがあることだと思う。いつか必ず退団する日がやってくる。タカラジェンヌとしての命は有限だ。ちゃぴさんにもついにその日が来た。この11月、『エリザベート』をもって退団する。タカラジェンヌとしての彼女にお金を使えるのもラストチャンスだと思うと、定期預金崩そうかな? という思いが頭をもたげてくる。だって全部……何もかもが最後だよ!?
これまで同じように喪失を乗り越えてきたヅカオタの先輩に「贔屓の退団決まりました、いくらあればいいですか」と真剣に聞いたら、間髪入れずに「100万円あれば大丈夫!」と返ってきた。最高の笑顔で。100万という金額感が妙にリアルだ。ヅカオタの「金なら払う、最高の舞台を用意しろ!」という姿勢、大好き。今から始めたところで到底100万には届かないわけだけど、ちょっとずつ退団資金(自分がするわけじゃないのにね)を貯めているところだ。貯金なんて小さな頃からまともに続いたことがなかったが、明確な目標があればできるんだな……。人間はアラサーになっても成長する。
今はまだ、正直そんなに悲しくない。悲しくはないけどさみしい。私が好きになった宝塚にはちゃぴさんがいた。ずっといた。彼女がいなくなってどう感じるのか、今はまだ想像がつかない。千秋楽、一体どんな気持ちで迎えるんだろう? きっとその時に、私のオタク人生の第2幕が始まる。