10月24日に卓球のプロリーグ「Tリーグ」が開幕した。世界最高峰のリーグを目指す輝かしい一歩だ。水谷隼、張本智和、石川佳純、平野美宇ら日本代表選手の多くが顔を揃え、これに海外の強豪選手が加わる。
彼らのプレースタイルはさまざまだが、その中で極端に異なるスタイルの選手がいる。「カットマン」と呼ばれる守備型の選手だ(英語圏ではChopper)。男子の村松雄斗(琉球アスティーダ)、女子の石垣優香(日本生命レッドエルフ)、徐孝元(ソ・ヒョウォン、TOP名古屋/韓国)の3選手がそれだ。
カットマンに勝算はあるのか?
スポーツに関心がある人なら、「カットマン」が何やら回転をかけながら粘るスタイルであることぐらいは知っているだろう。それに対してよく聞かれるのが「粘っているだけで勝てるわけがないのに何の勝算があってやっているのか」「何が面白くてやっているのか選手の気がしれない」といった声だ。もっともな疑問だ。テニスやバドミントンでそんなプレーをしたら勝ち目はないし、他のラケットスポーツでも同様だろう。「カットマン」とは、卓球だからこそ存在する特異なスタイルなのだ。
卓球に「カットマン」が存在する理由、それは、一言でいえば卓球では回転が致命的な威力を持つことだ。卓球の回転の威力といえば、テレビ番組などでは軌道が曲がることばかり取り沙汰されるが、卓球選手にとってそれは重要ではない。軌道は相手の打ち方から予測ができるし対応できるからだ。
卓球における回転の威力とは、ラケットに当たったときに跳ね返る方向が変わることだ。それは大きい場合には45度以上にもなる。どんな球技でも、ボールの方向が45度も変わったら競技にならない。卓球は相手のボールの回転がわからなければただの1球も返せないスポーツなのだ。