14年前、誰が「自己責任論」を言い始めたのか?

「イラク3邦人人質」記事を読み直す

プチ鹿島 プチ鹿島
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14年前、安倍首相は何を言っていたか?

 さらに社説だけでなく読売の一面コラム「編集手帳」もこう書いた。

《人質にされた三人は政府の「退避勧告」を無視してイラクに出かけている。悪いのは一にも二にも卑劣な犯罪者だが、世に与えた迷惑の数々を見つめればきっと、三人もひとつ利口になるに違いない》(2004年4月16日)

 どぎつい。「三人もひとつ利口になるに違いない」って完全に馬鹿呼ばわりである。読んでいるうちに当時のムードが蘇ってきた。そして今のSNSの空気も……。

 やはり自己責任論は2004年が「起点」なのだ。

官邸HPより

 今につながっているという意味で言うと次の記事が読ませた。

「自己責任問う声次々 政府・与党『費用の公開を』」(朝日新聞・夕刊 2004年4月16日)

 この記事の中で安倍晋三・現首相の声が載っていた。当時は自民党幹事長であり、党の役員連絡会後の言葉である。

《安倍幹事長は「山の遭難では救助費用は遭難者・家族に請求することもあるとの意見もあった」と指摘した》

 やはりと言うべきか、今につながる言説ではないか。

日本の政治家と全く違った、パウエル国務長官が言ったこと

 しかしこの記事の読みどころは次だった。ワシントン発の「米国務長官は『誇りにして』」という部分である。抜粋する。

《パウエル米国務長官は15日、一部メディアとのインタビューで、イラクで人質になった市民の自己責任を問う声があることについて「誰も危険を冒さなければ私たちは前進しない」と強調。「より良い目的のため、みずから危険を冒した日本人たちがいたことを私はうれしく思う」と述べた》

 なんと!

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パウエル国務長官 ©︎AFLO

 パウエル氏の言葉は続く。

 《「日本では、人質になった人は自分の行動に責任を持つべきだと言う人がいるが」と聞かれたパウエル長官は、これに反論して「彼らや、危険を承知でイラクに派遣された兵士がいることを、日本の人々は誇りに思うべきだ」と語った》

 パウエル氏の言葉は4日後の記事でも補完されている。

「私たちは『あなたは危険を冒した、あなたのせいだ』とは言えない。彼らを安全に取り戻すためにできる、あらゆることをする義務がある」(朝日新聞 2004年4月20日)

 イラク戦争を起こしたのは誰なんだよと思いつつも、パウエル氏の言葉は日本の首相や閣僚の言葉とまったく違うことがわかる。