“分断”スター首位のビヨンセは「反共和党スター」の象徴
そして、“分断”スター首位のビヨンセは、まさに「反共和党スター」の象徴だ。代表的な事例は、2016年の国民的人気番組スーパーボウルのハーフタイムショーで行った、ブラックパンサー党を模した反人種差別パフォーマンス。披露された楽曲『Formation』は、二大政党で評価が分かれるブラック・ライブズ・マター(警官による黒人差別疑惑への抗議運動)に言及しているととれる要素があるものだ。
5人をそれぞれ一緒くたにはできないが、共和党を辛辣に批判する有名人が同党支持者から好かれていなくても不思議ではないだろう。
MCの好感度調査を世代別に見てみると、50歳近いジェイ・Z含めた5人とも若者人気が高いことがわかる。例えば、リアーナの好感度はベビーブーマー世代(46年~60年代半ば生まれ)の間では74位とかなり低いが、ミレニアル世代(80年代~90年代半ば生まれ)の間では15位にランクインしている。彼女たちを好むミレニアル世代は、2016年大統領選において過半数が民主党を支持した年代でもある。
「2010年代チャートヒット・ミュージシャンのファン層は民主党支持に偏っている」とする調査は他にもある。例えば、2013年にMarketWatchが発表したFacebookにおける“いいね!”を基にしたファンベース党派性リサーチ。民主党支持者人気に偏る歌手はビヨンセやレディー・ガガと、MC調査と似通っている。
有権者6万5千人を動かしたテイラー・スウィフトの好感度
では、今回議論を起こした10年代のヒット歌手、テイラー・スウィフトはどうなのか?
テイラーは、MC調査の“分断”ランキングにランクインしなかった。2013年Facebookリサーチでは、民主党支持者と共和党支持者に同程度“いいね!”されている。つまり、同年代のケイティ・ペリーやレディー・ガガと異なり、彼女の支持層は“分断”されていなかったのである。
テイラー人気を支える年長者たち
また、世代別好感度もビヨンセらとは異なる。テイラーが民主党支持を表明した際、共和党のマイク・ハッカビーは「彼女のファンである13歳の少女たちに選挙権を与えない限り選挙への影響はない」とツイートした。テイラーの支持者層が低年齢であることを前提とした発言だ。
しかし、MC調査は、ハッカビーの見立てと異なる結果を示している。13歳はサンプルに含まれていないが……テイラーの世代別好感度は、ミレニアル(80年代~90年代半ば生まれ)55位、ジェネレーションX(60年代半ば~70年代生まれ)30位、ベビーブーマー(46年~60年代半ば生まれ)9位。若者より年長者の好感度が高いのだ。優等生キャラのヤラセ疑惑や人気セレブとの対立がSNSで話題になったためか、ミレニアル世代では比較的下位についたものの、好感度自体は54%で低くはない。彼女を好く人も、好かない人も多いため55位となっている。
まとめると、テイラーは、元々ファンベースに党派性があまり見られず、さらに年長者からの好感度も高いという調査結果が出ている。スターが選挙に与える影響力に関しては一概に結論は出せないが、テイラー人気を甘く見たハッカビーの予想ははずれた。非営利団体vote.orgによると、テイラーが民主党支持表明をした24時間後、有権者登録は65,000人以上増えた。これは8月分の登録数56,669人を超える数だ。