分断国家の真の人気者とは誰なのか?
バランスの良い好感度を築いてきたテイラーだが、MC調査における好感度総合ランキングでは31位だった。分断が騒がれるアメリカでの国民的な人気者とは誰なのか? TOP3を紹介しよう。
1位ドウェイン・ジョンソン
2位ジャッキー・チェン
3位ウィル・スミス
この3人の共通点は、映画スターというだけではない。MCはこうまとめている──「3人とも、巨大なプラットフォームで政治的主張を行わないマイノリティ人種の男性だ」。実は香港出身のジャッキーは自国の政治についてたびたび発言しているのだが、アメリカにおいてはこのようなイメージかもしれない。ちなみに、2015年以降No.1シングルを出した音楽スターで最も高い順位を記録したのはブルーノ・マーズ。彼もマイノリティ人種男性で、ドウェインと同じく2016年大統領選で支持政党を表明しなかった。
“好感度”で見ると分断国家でも、再生回数で見てみると……
「民主党支持者はアーバンを好み共和党支持者はカントリーを好む」──これはアメリカでよく言われるステレオタイプだが、再生数を基にした2016年のSpotify党派別人気楽曲ランキングはそれを裏付けている。
民主党
1位エクスチェンジ(ブライソン・ティラー)
2位ワーク(リアーナ)
3位コントローラ(ドレイク)
共和党
1位H.O.L.Y(フロリダ・ジョージア・ライン)
2位サムウェア・オン・ザ・ビーチ(ダークス・ベントレー)
3位Tシャツ(トーマス・レット)
日本ではあまり馴染みがないが、共和党1位から3位にランクインしているフロリダ・ジョージア・ライン、ベントレー、レットは全員カントリー歌手だ。
政治観と音楽趣向の関係は、地理要因が大きいとする向きもある。カントリーファンの多い農村部と南部は共和党に投票する傾向があり、アーバン人気の高い都市部は民主党支持者の票田とされがちだ。
しかし、こうした調査にはカラクリがある。このランキングは、実は「他グループと比べて当該集団で特に聴かれた楽曲」を抽出したものなのだ。純粋な「総合再生数」順位はこうなっている。
民主党 1位ワン・ダンス(ドレイク) 2位パンダ(デザイナー) 3位キャント・ストップ・ザ・フィーリング!(ジャスティン・ティンバーレイク)
共和党 1位ワン・ダンス(ドレイク) 2位パンダ(デザイナー) 3位キャント・ストップ・ザ・フィーリング!(ジャスティン・ティンバーレイク)
総合再生数TOP3は、党派でわけようともまったく同じ、そのままチャートヒットだ。TOP10に範囲を広げても、民主党支持者はリアーナとドレイクの楽曲が、共和党支持者はEDMデュオ「チェインスモーカーズ」の楽曲の順位が若干高い程度である。「音楽嗜好における党派性」は取り沙汰されやすいが、再生回数だけで見れば“分断”はあまり起こっていないのだ。
共和党も民主党も支持しない人たちが聴いた曲
ちなみに、この調査で皮肉なのは、共和党も民主党も支持しない人々が特段聴いた楽曲だ。このグループの1位楽曲は、J・コールによる『No Role Modelz』。二大党派間の敵対が激化する中、トランプとヒラリーどちらも支持できなかった人々の気持ちを代弁するかのように、コールはこうラップしている。
「模範となる者が誰もいない
記憶の奥の奥まで探したけど 一人も見つけられなかったんだ」