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「東京は夜の七時」を若い世代と一緒に歌い継ぐこと

速水 渋谷系の曲のなかでも「東京は夜の七時」は、リオ五輪の閉会式でも歌われて、もはや東京のアンセムになってますね。

坂口 今回はベスト盤ということで、リミックスを小西さんにお願いしたところ、「やるならリミックスではなく、少林兄弟というバンドと一緒にカバーをやりたい」と。直々にリクエストがあり、新たに録音することになったんです。「東京は夜の七時」は本当にたくさんの人たちにカバーされていますが、小西さんがお気に入りのバンドを連れて直々にカバーしてくれたことで、「渋谷系を歌う。」プロジェクトの意味合いもグッと深くなりました。

 

おぐら そして11月17放送の『MUSIC FAIR』では、いまや国民的アイドルとなった乃木坂46と一緒に「東京は夜の七時」を歌うんですよね。

野宮 はい。乃木坂46のみなさんには、ロカビリーアレンジの新「東京は夜の七時」を歌うということで、50年代の可愛い衣装を着ていただきました。こうして若い世代の人と一緒に歌い継いでいけるというのはとても幸せなことです。

速水 同じく東京の景色を歌った曲でいうと、ユーミンの「中央フリーウェイ」。この曲のカバーもベスト盤に収録されていますが、レコーディングにはかなりこだわったとか?

 

坂口 はい。「中央フリーウェイ」はもともと、久世光彦さんがプロデューサーを務めた『セブンスターショー』というTBSで1976年に放送されたスタジオライブ番組のために作られた曲なんです。週替わりでミュージシャンを特集していて、番組で披露された「中央フリーウェイ」は、バックの演奏がティン・パン・アレー、ボーカルがムッシュ、ユーミンはコーラスで入るという。ところが、ユーミンが半年後にリリースした「中央フリーウェイ」は海外レコーディングなので、ティン・パン・アレーの演奏じゃない。そこで野宮さんのカバーでは、あのときのティン・パン・アレーのアレンジを完コピしようと。今回のベスト盤に収録されているのも、その完コピ版です。

おぐら 今回のベスト盤には未収録でしたが、アルバムでは槇原敬之「冬がはじまるよ」もカバーしてますよね。マッキーも渋谷系と関わりが?

坂口 この曲は『野宮真貴、ホリデイ渋谷系を歌う。』の選曲に悩んでいた時に、小西さんから「12月に入ったらさ、毎年DJでマッキーの『冬がはじまるよ』かけるんだよね」って聞いたんです。それでよく考えたら、マッキーはプレ渋谷系だなって。

速水 教授がやっていたラジオ番組ですね。

坂口 そうです。マッキーはもともと、坂本龍一さんがデモテープを募集して番組で発表していた『サウンドストリート』というラジオ番組に応募していた。16歳の高校生の時に。そのラジオ番組に応募していた同期が、まだ海外に行く前で学生だったテイ・トウワくん。その番組発のコンピレーションアルバムには、若き日の槇原敬之とテイ・トウワの曲が入っています。

 

野宮 「渋谷系を歌う。」シリーズは、どの曲にもそういうエピソードや人と人とのつながりがあって、音楽から生まれた物語の積み重ねで出来上がっているんです。

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野宮真貴MC@Billboard Live 2015年11月19日

「中央フリーウェイ」

 2012年の最初のビルボードライブの時に、渋谷系のキーパーソン村井邦彦さん作曲の「或る日突然」を歌いましたが、先日、村井邦彦さんの古希を祝う「アルファミュージックライブ」がありました。観に行った方もいらっしゃるでしょうか。そのライブの中で、光栄にも私が松任谷由実さんを紹介するプレゼンターを務めました。この時にユーミンが歌った曲をお届けします。

 これは、当時彼女がかまやつひろしさんのために書いた曲ですが、この曲から「ニューミュージック」という音楽ジャンルが生まれたと言っても過言ではありません。

 そして、私にとっては「東京は夜の七時」のルーツとなる歌。今から39年前(※2015年当時)、「東京は夜の七時」の20年前にユーミンが描いた東京という街は、今でも色あせることなく、人の心に残っています。私が一番好きな東京のラブソングです。

撮影=佐藤亘/文藝春秋