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カルチャーの中で音楽の存在感が段違いだった90年代

坂口 Winkで成功した細川健さんという方が、ピチカート・ファイヴがデビューした「ノン・スタンダード」レーベルにいた牧村憲一さんを迎え入れて、フリッパーズを手がけました。ちなみに、ポリスターはアリスのために作られたレーベルなので、本来は渋谷系とは縁遠いレーベルだったんですよ。

 

おぐら 動くお金だけではなく、90年代って、今と比べるとカルチャーの中で音楽の存在感が段違いだったように思うんです。

坂口 カルチャーとしてもそうですし、もっと大きく娯楽として音楽の比重が大きかったと思いますね。

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野宮 信藤三雄さんの手がけた渋谷系のポスターやCDジャケットがすごくおしゃれだったことで、それをお部屋に飾るようになりましたし、女子高生のオリーブ少女たちがカフェでお茶するようになったり、ライフスタイルまで変えましたよね。

速水 渋谷系は、その時代を盛り上げただけではなく、後進に与えた影響がものすごく大きいですよね。

坂口 おぐらさんは何年生まれですか?

おぐらりゅうじさん

おぐら 1980年です。なので、10代が丸ごと90年代でした。

坂口 そういう世代の若い子たちが、渋谷系の音楽から映画やファッションをはじめとした、あらゆる文化を学んでいったんですよ。

おぐら 1980年生まれのミュージシャンだと中田ヤスタカさんやヒャダインさん、1981年生まれが星野源さん、もう思いっきり渋谷系の影響を受けています。

速水 だいぶわかりやすいね。

坂口 さっきも言いましたが、渋谷系というのは音楽のジャンルではなくて、創作するにあたってのスピリッツというか、作り方の方法論の継承だったりするんです。渋谷系のルーツとなったはっぴいえんどは、洋楽のメロディーに日本語の歌詞をのせる実験をして成功した。その歌詞を書いていた松本隆さんに影響を与えたのが筒美京平さんであり、村井邦彦さんであり、ほかにも山上路夫さんや橋本淳さん、脈々と受け継がれています。タイプとしては、センテンスを並べて詩にする作詞家。ワンフレーズずつ意味のある言葉なんだけど、それがちゃんと並ぶとストーリーになるみたいな作り方。それはもう、はっきりと小西さんの作詞にも繋がります。