新キーワードは「厳格化」?
和田政宗 自民党・参院議員
「今まで対応できていなかった国民健康保険、生活保護の問題などは、新たに設置される出入国管理庁などで対応していき、より厳格化、抜け道を防いでいく」
オフィシャルブログ 10月30日
入管法改正案の議論が進むにつれ、「厳格化」という言葉をよく聞くようになった。以前は受け入れ基準や資格審査などの「厳格化」がよく言われていたが、ここ数日は外国人労働者への対応の「厳格化」がよく語られている。自民党の和田氏はブログで入管法改正案について「保守の方々からの批判はすさまじい」としつつ、「厳格化を条件として認めていくのが方向性としては妥当である」と記している。ここで言う「厳格化」とは前者ではなく、後者の意味合いである。
政府は6日、外国人による公的医療保険の不適切利用を防ぐために健康保険法を改正し、適用条件を厳格化する方針を固めた。加入者の被扶養親族が適用を受けるためには、日本国内に居住していることを要件とする方向で検討しているという。ただし、来年の通常国会への改正案提出を目指しているので、来年4月の外国人労働者受け入れ拡大実施には間に合わない。
社会保険の不正利用は「ほぼ確認されなかった」 だが……
山下貴司 法相
「悪質な社会保険料の滞納者には在留を認めないことを検討している」
日本経済新聞 電子版 11月9日
9日の衆院法務委員会での発言。こちらも「厳格化」の一環だ。
ロンドン大学高等研究院難民法イニシアチブの橋本直子氏は、入管法改正案の不安材料として「『外国人が増えると治安が悪化する』とか『外国人による国民健康保険制度の乱用』などといった妄想・誇張・フェイクニュースへの固執と、それに基づく政策立案」を挙げている(ハフポスト日本版 11月6日)。
厚生労働省が在留外国人による国民健康保険利用に関する実態調査を行った結果、「在留外国人不適正事案の実態把握を行ったところ、その蓋然性があると考えられる事例は、ほぼ確認されなかった」とその通知で結論づけていた(「在留外国人の国民健康保険適用の不適正事案に関する通知制度の試行的運用について」2017年12月27日)。外国人による「国民健康保険制度の乱用」について、橋本氏は「誇張にもほどがあるフェイクニュース」としている。外国人労働者への対応を「厳格化」していけば、「保守の方々からの批判」も収まると考えているのだろうか?