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RADWIMPS騒動から中核派動画まで なぜ「愛国」「極左」とエンタメが急接近するのか?

2019年の論点100

2018/11/20
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ウーマンラッシュアワー村本の「風刺」の影響とは?

 現代においても、2020年の東京五輪・パラリンピックが近づき、国威発揚のムードが高まるなかで、音楽に限らず、さまざまな政治的エンタメが「下から」続々と生み出される蓋然性は高い。そしてそれらは、欲望(売りたい、楽しみたい)に駆動されているぶん、かえって暴走しやすく危うい。スポーツの応援ぐらいは構わないが、過剰なナショナリズムの煽動はかつて国の行末を誤ったこともあるのだから、一定の抑制が求められる。

東京五輪開催決定の瞬間 ©︎AFLO

 そのいっぽうで、現状に批判的なエンタメも盛り上がりつつある。2017年末、お笑いコンビのウーマンラッシュアワーがテレビ番組「THE MANZAI」で披露した政治風刺漫才はそのひとつだ。原発、沖縄、被災地、北朝鮮などの問題を早口でたたみかけ、しかるのち最大の問題は「国民の意識の低さ」「お前たちのことだ」と喝破するという内容で、批判もあったものの、「痛快だ」「よく言ってくれた」との肯定的な評価を広く受けた。同コンビの村本大輔はその後、「朝まで生テレビ!」などの討論番組に積極的に出演している。

エンタメ風な中核派のYouTube動画「前進チャンネル」

 反原発や自民党批判の歌を歌うアイドルグループの制服向上委員会も、この系統に連なるだろう。2015年には、メンバーの一部が日本共産党の講演会に参加するなどしている。

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 ただ、もっとも尖鋭的な事例としては、極左の中核派がユーチューブ上の「前進チャンネル」で繰り広げている宣伝活動をあげなければならない。数多くのゲリラ事件などを引き起こしている過激派の動画ながら、NG集や視聴者プレゼントを織り込むなど、エンタメ風に面白く編集されており、わかりやすい政権批判や格差社会批判とも相まって、「言っていること自体は悪くない」「意外と普通のひとたちで好感をもった」などの反応も集めている。

 かつてオウム真理教は、書籍、漫画、アニメ、音楽を使って信者を呼び込み、中東の過激派組織の「イスラム国」は、動画やオンライン雑誌を使ってテロリストを募った。中核派の動きは、こうした手法をほうふつとさせる。2018年には、約40年ぶりに現役東大生が同派に加入してもいる。小さな組織の動きだからといって、けっして侮れない。