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母親から受けたファッションへの影響

鈴木 ちなみに、イチゴ柄のパンツってどこで買うんですか?

トミヤマ あれは母親が買ってくれたの。

鈴木 え~! お母さんが!?

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トミヤマ そう、母親に個性的な服を買い与えられるっていう環境が生まれながらにしてあった。

鈴木 それだいぶ特殊ですよ(笑)。

トミヤマ 物心ついたときから、あなたは個性的な服を着なさいっていう教育を受けてるし、40歳を前にコンサバに挑戦しようと思ったのは母親からの影響を抜け出そうって思ったのかも。母親の影響から抜け出すためには、もうコンサバしかないんですよ。

鈴木 お母さんは普通の格好しないんですか? 

トミヤマ 普通の格好してるの見たことないですね。ギャルソンとか着てます。

鈴木 それやっぱり、ファッションエリートですよ。 

 

トミヤマ いや、ほんとにエリートではない(笑)。

鈴木 普通の格好してる女子たちに対して優越感とかってありますか?

トミヤマ ううん、全然ないですね。普通ができないから、逆にコンプレックス持ってるくらい。

鈴木 優越感もない、モテたくもない、性欲を喚起させたくもない。

トミヤマ  そうですね、全部自分のためにやってるから。

鈴木 奢ってもらうのもイヤ?

トミヤマ あ~、居心地悪いですね。「なんで?」って思う。

鈴木 「いい女だから」って言われたら?

トミヤマ お互い相手のことを理解し合っていて、さらに何かのお礼とか記念とかの理由があるなら奢ってもらいますけど、「いい女だから」っていうのは理由になってない。その前に、よく知りもしない女のことを「いい女だ」とかって思うのやめたほうがいいよって言いたい。そういうのは、ちゃんと話し合いを重ねて、相手のことをよく知ってから初めて思うことだぞって。

 

鈴木 えーっ。思うのは自由じゃないですか。パートナーを選ぶなら別ですけど、男の性欲って、そんなたいそうなもんじゃないですよね。どんなに高尚な人でも、博識で思いやりがある人でも、男だったら反射的に「あ、おっぱい」って勃起するし。

トミヤマ 涼美さんが性欲を喚起することに抵抗がないっていうのは、どっかで男の人をコントロールできると思ってるからじゃないですか。私にはそれができそうもない。よく知らない人の性欲に対する恐怖心があるんですよ。だから派手で変な服を着て、ややこしい女だぞっていうシグナルを出しておくことで、性欲ベースで思考する男性はある程度排除してしまう。

鈴木 そういえば、私の母はずっとトミヤマさんのように生きろって言ってました。「あなたの格好はレイプしてくださいって叫びながら歩いてるようなもんだ」って。

トミヤマ 母親は心配なんだよねえ。

鈴木 あなたの格好は、本当にあなたを愛し、あなたの思想を理解し、またあなたの思想と自分の思想を戦わせるような魅力的な男性は逃げて行き、その代わりにどうしようもないゴミばっかりをコロコロのように吸い付けて歩いてる、なんの得もない格好だって。

トミヤマ めちゃくちゃな言われようだね(笑)。

鈴木 母親としては、余計な虫を寄せ付けず、自分のことをちゃんと理解する気のある男性とだけコミュニケーションとってほしかったんでしょうね。

トミヤマ でも、そこで親の言いなりになったら、それこそ自分というものを他者に明け渡してしまうことになるので、ギャルを貫いて正解だったんじゃないですかね。服と自意識って、絶対にどこかで繋がっているじゃないですか。私もコンサバ服に挑戦したことで、新たな自意識が掘り起こされましたし。だから私は、自分のスタンダードを決めるんじゃなく、いろいろ試していきたいんです。自分の内面を多チャンネル化したい。このままだと「あいつは死ぬまで自意識過剰な女だった」って言われそうですけど(笑)、誰に何を言われようとも、自分の人生に飽きない方が大事かなって。

聞き手・構成=おぐらりゅうじ

40歳までにオシャレになりたい!

トミヤマ ユキコ(著)

扶桑社
2018年5月30日 発売

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写真=鈴木七絵/文藝春秋