気になる園遊会でのお食事
園遊会は明治時代の「観菊会」「観桜会」に由来すると言われ、招待客をもてなすため、様々な趣向が凝らされている。宮内庁庭園課は、秋の園遊会にタイミング良く美しい菊の花を飾るため、数種類の菊を育てるという。
そして何より、招待客が楽しみにしているのが園遊会でのお食事だろう。園遊会の会場には、6カ所ほどテントが設けられ、サンドイッチやカナッペ、ケーキなどの軽食に加えて、御料牧場で育てられた羊の肉を使ったジンギスカンや、焼き鳥、ちまき寿司に細巻き寿司などが振舞われる。羊の肉や鶏肉を使った料理が選ばれているのは、招待客が宗教上の理由から園遊会での食事を楽しめないことがないように、という配慮があるからだという。
数年前に園遊会へ出席したことのある人に話を聞いたところ、とても洗練されたサービスのもと、食事が提供されるそうだ。
「訪問着で参加する女性が多いため、お食事を頂くときに、袂を気にしなくて済むサイズの食べ物だったことがとても印象的でした。ジンギスカンや焼き鳥も大盛りにせず、ちょうど良い量を頂けます。お皿は紙皿ではなく、白い磁器のお皿で、飲み物はグラスに。ジンギスカンや焼き鳥はやはり人気で、ずらりと行列をなしているのかと思いきや、そんなことはなく『いただきたいのですが』と申し上げると、サッと入れてくださる。招待客を気遣わせず、本物のサービスをなさっていると感じました」
帰り際、招待客にはお土産として「菊焼残月」というどら焼きのような和菓子が配られる。夫婦で招待された場合でも、1人につき1箱、頂けるそうだ。皮には菊の御紋の焼き印が入っていて、あんこがぎっしり。真っ白な箱に5つ入りで、白い紙袋に入れて手渡される。
次に催される園遊会の主催者は、新天皇皇后
今回の園遊会では、各界の功労者である招待客からも「最後なのかなと思うとすごく寂しい」という声もあがり、テレビなどを通じ、一つのフィナーレとして両陛下のお姿を記憶しておきたい、と感じた人も多いのではないだろうか。次に催される園遊会の主催者は、新天皇皇后となられる皇太子さまと雅子さまだ。
2015年秋の園遊会で、長期療養中の雅子さまが12年ぶりに出席された日のことは、忘れがたい。11月12日、式典行事が終わると、雅子さまは数十メートルの距離をお歩きになって、10分ほど招待客の一部と懇談なさり、浅黄幕の切れ目で中座されて、一旦東宮御所へお帰りになった。その前日には、宮内庁から「せっかくの機会なので招待客のお顔の見えるところまで少し歩かれてから退出されたら、との両陛下の思し召し」があったというペーパーが出され、宮内記者会を驚かせたこともあった。
それでも、この日はとても鮮やかなワインレッドのスーツに身を包まれ、雅子さまがお似合いになる色のお召し物を臆せずお選びになることで、ご自身を鼓舞されているようにも見えたものだ。そして今回、ついに雅子さまが園遊会の全ての行程に臨まれたことで、両陛下は最後の最後に、深く安堵されたのではないだろうか。