文春オンライン

むき出しの作品に囲まれて「身体ってなんだ?」を考える

アートな土曜日

2018/11/17
note

観ているだけで、世界と溶け合う感覚が味わえる

 今展では、川内によるたくさんの新作が観られる。人間、動物、植物、食べもの……、描かれているものは多岐にわたるのに、会場を巡っているとそうした分類や名付けはどうでもよくなってくる。それぞれの作品にはただ、いろんなかたちをした、やたら存在感のある何かが現れ出ているだけ。

 

 そう、ここで川内が試みているのは、いろいろな事物がまとう表面的なものを剥いでいって、裸の姿を露わにしようとすること。固有性を剥ぎとった先に、あらゆる垣根を越えた根源的なものを見出さんとしているのだ。

 その結果、会場には何とも名付け得ぬ、生々しいかたまりがむき出しのまま、そこかしこにゴロゴロとしていることとなった。対面していると、それら生々しいかたまりを、自分の中に摂取したくなってくる。いや、逆に自分が取り入れられてしまってもいい。つまりは、無性に一体化したくなる。

ADVERTISEMENT

 

 すべての境界線が曖昧になっていって、自分という存在の輪郭すらあやふやになる不思議な体験を、会場でぜひ味わってみたい。

写真=伊澤絵里奈

むき出しの作品に囲まれて「身体ってなんだ?」を考える

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー