「男だろ!」の使い方にこだわる大八木監督
この「男だろ!」の使い方について、大八木監督はすごくシビアだったんです。簡単には使ってはいけない雰囲気があったし、ましてやいじるなんてとんでもない言葉でした。3年ほど前に大八木監督は本を出したのですが、編集者は「男だろ!」というタイトルにしたかったそうです。でも最終的についたタイトルは『駅伝・駒澤大はなぜ、あの声でスイッチが入るのか―「男だろ!」で人が動く理由』。「男だろ!」はサブタイトルに申し訳程度にしか入っていません。大八木監督にとって「男だろ!」は、選手を鼓舞するときに、なぜか自然に出てくる言葉で、キャッチコピーのような言葉じゃなかったんです。そんな経緯もあって、「男だろ!」の使い方については身内もなんとなく気を使うようなところがあった。
その言葉が、なんとうちわに使われていた。これは事件です。ネットでは「あれはどこで買えるんだ!」と陸上ファンにバカ受けで、東洋や青学など他校ファンまでもが「あれは欲しい!」と言うほどの大人気になりました。実はこのうちわは、大八木監督の出身地である会津で行われた還暦祝いの席で、同じく会津出身で駒澤の元キャプテンだった安西秀幸さんが作って配ったものらしいんです。還暦祝いの、ちょっと遊びで作ったものが思いの外ウケてしまい、大八木監督の公認も得られたという経緯らしいです。現在、OB高林祐介さんのツイッターにも、監督が笑顔でうちわを持っている写真とともに「本人公認。本人にご許可いただきました」とアップまでされていました。世田谷246ハーフで大八木監督にお会いしたとき、うちわをもって笑顔でポーズをとっていただきました。どうです? いい笑顔でしょう。
これは単なるおもしろい話ではない
ただ、これを単なるおもしろい話で終わらせてはいけません。あの駒澤が「男だろ!」うちわを許される雰囲気になっているというのがポイントなんです。駒澤といえば、走り終わったらコースに向かって礼をするなど、これまではとにかくピリッとして真面目なイメージでした。そもそも予選会に回ったという時点で、悲壮感が漂っててもおかしくない。でも今年は、みんな笑顔でのびのびとした雰囲気で、監督もそれに笑顔で応じていたりと明らかに変化していました。その変化が結果につながるか、「うちわ」は箱根でも見られるのか、駒澤には注目ですね。