ぬれ煎餅定番化、次の一手は「まずい棒」
ところが、ぬれ煎餅騒動で窮地は脱したとはいえ、銚子電鉄の経営危機は変わらない。線路施設の修理代を集めるため「銚子電鉄サポーターズ」が結成され、入会金や募金など1,800万円を集めて銚子電鉄に寄付した。
脱線事故で電車が走れなくなると、地元の高校生がクラウドファンディングで電車の修理代を集めた。銚子電鉄もお化け屋敷電車などイベント列車を運行し、笠上黒生駅にネーミングライツを実施し、育毛関連製品の製造販売会社が応じて「髪毛黒生駅」とした。
売れるモノなら何でも売るスタンス。一方でぬれ煎餅のブームは落ち着きつつあった。そこから生まれた新製品が「まずい棒」というわけだ。ファンが多いスナック菓子「うまい棒」をリスペクトし、キャラクターデザインは『地獄変』などホラーマンガの第一人者、日野日出志さんを起用。前述のCMで「うーんまずい、もう一本。でもホントはおいしいんだよな」と語る人物も、じつは日野日出志さんご本人。悪役商会の八名信夫さんのイメージに重なるけれど、まったくの偶然だ。
真夏になるとトウモロコシ畑がたくさん
ぬれ煎餅は銚子名産の醤油を使う。しかしまずい棒はコーンパフにコーンポタージュ味。ちっとも銚子と関係ない……と思うかもしれない。
じつは銚子でもトウモロコシを作っている。銚子電鉄沿線に限らず、銚子市郊外は真夏になるとトウモロコシ畑とヒマワリ畑がたくさん現れる。
ただし、これらは食用や観賞用ではない。キャベツの肥やしだという。銚子はキャベツが特産品。キャベツの収穫が終わると、キャベツ畑に栄養分を与えるために、トウモロコシやヒマワリを育て、土に還す。畑の栄養と肥料を茎に溜め込み、自ら肥料になる。まずい棒の原料が銚子のトウモロコシというワケではないけれど、トウモロコシには少なからず縁があるというわけだ。
銚子漁港、犬吠埼と、銚子電鉄沿線は海を感じさせるけれども、銚子電鉄の車窓から海は見えない。しかし、ちょっと歩けば景色の良いところにいける。全国有数の港、銚子漁港のうまいものもたくさんある。
バスのアクセスになるけれど、銚子電鉄のぬれ煎餅直営店「ぬれ煎餅駅」には全国の米菓が集まって、まるでおせんべい博物館だ。ぬれ煎餅もまずい棒も通信販売しているけれど、ぜひとも銚子電鉄を訪れて買ってほしい。
写真=杉山秀樹/文藝春秋
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