たいていの人は頭を使わなきゃ生き抜いていけない
――昨年以降、解散を選ぶアイドルグループも増えてます。バニラビーンズやPASSPO☆といった同じ時代を一緒に活動してきたグループも解散しました。
遠藤 正直に言えば、年齢的には新陳代謝していくことは仕方ないですよね。美しい時にアイドルをやめるのはいいんじゃないかと思いますよ。
――遠藤さんはアイドルの経験がいまの仕事につながりましたが、他のアイドルも卒業後のキャリアを考えることは重要かもしれません。
遠藤 なりゆきで幸運な道を進める人もいるけど、たいていの人は頭を使って考えなきゃ生き抜いていけないと思うんです。中途半端に1回売れてしまったことで、セカンドキャリアのことを考えることなく、気がつくと人気が落ちてお給料も減って、いい男性とも巡り合うことができない、みたいなことが心苦しい。「若さ」や「かわいさ」は期間限定のものだと当事者はなかなか気づけないので、自分たちみたいな人間が教えてあげなきゃいけないなと思ってます。
私は我慢してる女の子を助けたいんです
――ボイトレでそういう話もするんですか?
遠藤 何回か教えてる子には言ってますよ。「いまやっていることが身になっているのか分からない」と聞かれたこともあったけど、後々につながっていくと考えながら活動すれば身になるはずだと思うんです。あとは、まわりにいる人を大切にすること。人間、ひとりじゃ生きていけないですから。
――アイドリング!!!のプロデューサーだった門澤さんや神原さんは、全員卒業後も仕事面でメンバーをフォローしてますよね。とはいえ、アイドル周辺には怪しい大人も多いじゃないですか。
遠藤 見極める力もつけなきゃいけないと思うけど、私は女の子たちを守りたいんです。女性アイドルは持っている権利がすごく少なくて、大人に生かしてもらっているから、嫌なことを我慢しなきゃいけないと思ってる。日本の男性の特性なのか分からないけど、か弱くて反論してこない少女に上から圧をかけるような人だっているじゃないですか。いい人ばかりなんだけど、なかにはそういう人がいて、眠れない日々を過ごしている子もいるんですよ。私はそういうファンに「調子に乗るなよ」と言える側だったけど、アイドルをちゃんとやろうとしている子ほど、そういうことは言えないし、そこにファンも集まってしまう。そうやって我慢してる子を助けたいと思うんです。
――遠藤さんはさらに先の自分のことは考えていますか?
遠藤 この仕事を続けて40歳になったら経営者になりたいんです。それで、アイドル出身で行く末に迷って「ボイトレになりたい」という子がいれば拾い上げて先生になってもらう。いまはそんな夢があるんです。
写真=川しまゆうこ
えんどう・まい/1988年生まれ。2006年からアイドルグループ「アイドリング!!!」に所属、リーダーを務める。2014年にグループを卒業、ソロ活動開始。2017年、芸能界引退。現在は女性向けのボイストレーナー、レコーディングの仮歌などで活躍。