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芸能界を引退して、ボイストレーナーになった理由

――2017年末に芸能界を引退すると、今年8月に音楽の裏方に就いたことを発表しました。現在はボイストレーナーや仮歌制作をやっているそうですが。

遠藤 いまが一番音楽と真剣に向き合っているかもしれません。人に教えるという行為自体でそうなるし、直接お金をもらうからより力が入るんですよ。それまでは給料制で、自分の金銭的価値なんて分かってなかったんですけど、いまは1レッスンいくら、仮歌1曲いくらで先方とやり取りしているので。アイドルが薄給であることは分かっているので、その貴重なお金をいただいて、その1時間が彼女にとって身になっているのか考えながら教えてます。

――アイドルを卒業後、振り付け師になるパターンはあってもボイストレーナーは珍しいかもしれません。

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遠藤 ボイストレーナーが世の中に何千人、何万人いるか分からないけど、その中で一番優れたトレーナーになることは無理だと思うんですよ。じゃあ、自分の強みはどこかと考えたら、アイドルグループからはじまってソロでCDを出させてもらった経験なので、他のトレーナーさんよりアイドルの子たちに寄り添うことができるんじゃないかと考えたんです。ボイトレだけじゃなくてメンタル面を含めたケアもできたらいいなぁ、というのも大きくて。アイドルをやっていると、ファンやメンバー、運営……いろんな方との人間関係のなかで擦れていって、心がすさんでしまう瞬間って絶対にあるんですよ。そんな気持ちが分かるほうだと思うので、歌やステージパフォーマンスもそうだけど、メンタル面の悩みにも寄り添えるようなトレーナーになりたいと思ってます。それが私のできることだし、求められていることなんじゃないかって。

 

衣装と歌詞が年齢に合わないのが精神的にキツかった

――遠藤さん自身もアイドル時代にメンタルをやられたことはありましたか?

遠藤 めっちゃありましたよ。先ほど話した衣装と歌詞が年齢に合わないことなんて精神的にキツかったです。ただ、メンバーとは仲が良くて、人間関係で揉めたことはなかったです。他のメンバーを見ていると、いろいろあるんだろうなと思ったこともありますけど(笑)。そんな私の経験も踏まえて、歌のレッスンの時間が悩みを聞いてあげる時間になってもいいと思うし、時間があればレッスン後にお茶をしながら話を聞くことだってかまわないし、枠にとらわれない指導ができたらいいなと思ってます。そうやって求められることで、自分の存在意義を確認できている部分もあるのかなと。

――いま振り返って2010年から数年間のアイドル界は面白かったと思いますか?

遠藤 面白かったですよ。個性の強い子ばかりでしたから。私、最初は全然アイドルに興味がなくて。正直、未熟なモノを見せられてお金を払うことに違和感があったんです。だけど、年齢を重ねると誰かが頑張ってる姿を観るだけで涙が出てきちゃうようになって。未熟な子たちが「今日はできなかったけど、翌週はできてる」となると泣いちゃうんです。それは私がこの世界から離れたからかもしれないけど。

 

――いわゆる青春映画って、高校生よりもその頃をすぎた大人のほうが観た時にグッとくるんですよね。

遠藤 うん。うん。うん。その当事者が観ても……ということはあるのかもしれません。いまアイドルを見ていると、「どんどん失敗して、どんどん大きくなりなさい」って思いますもん(笑)。