10月30日の新日鉄住金に続き、11月29日、三菱重工業が敗訴した。
広島の工場で働き、被爆したとする元徴用工5人と、名古屋の航空機工場に強制徴用されたとする元朝鮮女子挺身隊員5人が訴えを起こしていた裁判で、いずれも13年と15年に原告が勝訴し、三菱重工業が上告していた。
「74年ぶりに晴れた恨」との報道も
韓国の最高裁判所は、新日鉄住金裁判と同じく、原告の個人請求権は消滅していないと判断。広島の元徴用工にはそれぞれ一人当たり8000万ウォン(約800万円)、元朝鮮女子挺身隊員には1億~1億5000万ウォン(約1000万~1500万円)の損害賠償の支払いを三菱重工業に命じた。
広島の元徴用工原告は5人が他界し、現在はその遺族23人が裁判を引き継いでおり、元朝鮮女子挺身隊員のひとりは小学6年生の時に強制徴用されたと訴え、「(1945年から)74年ぶりに晴れた強制徴用の恨」(聯合ニュース)と報道するメディアもあった。
日韓両国が相手国大使を呼び出す異例事態
日本は新日鉄住金の裁判同様、1965年の日韓請求権協定で解決済みという立場で、「1965年の日韓正常化から築いてきた友好関係の法的基盤を根本から覆すもので断じて受け入れられない。(韓国政府の)適切な措置が講じられない場合は国際裁判や対抗措置を視野に入れる」(朝日新聞)と強い遺憾を表明し、駐日韓国大使を呼び抗議したが、韓国も駐韓日本大使を外務省に呼び、「日本政府が続けて韓国の司法部の判決について過度に反応していることはたいへん遺憾、自制を求む」(聯合ニュース)と訴え、日韓両国が相手国の大使を呼び出すという異例の事態となった。
元徴用工の裁判は12月以降も続くが、日本企業へ賠償金を求める流れはこの29日の裁判で決定づけられたとされる。「日本は企業と財団を作るような前向きな姿勢を見せてほしい」(韓国紙記者)という声も聞かれるが、年内にも立場を表明するとしていた韓国政府は果たしてどんな立場をとるのか。
日韓慰安婦合意の根幹「和解・癒やし財団」の解散
しかし、日韓を揺さぶる問題はこれだけではない。
11月21日には、日韓慰安婦合意の根幹ともいえる「和解・癒やし財団」の解散が韓国政府から正式に発表された。
「日韓慰安婦合意」は周知のとおり、2015年12月28日に朴槿恵前大統領の時代に合意されたもの。財団はこの合意の下、2016年7月に設立され、日本からの拠出金10億円から生存している被害者と遺族にそれぞれ1億ウォン(約1000万円)と2000万ウォン(約200万円)を支払うことがその役割とされた。これまで元慰安婦や遺族に44億ウォン(約4億4000万円)が支払われ、職員などの人件費などで5億9000万ウォン(約5900万円)が使われた。