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杉浦直樹、宮本信子、舘ひろし……豪華なナレーター

――ナレーションにもこだわりがあるように思います。『人生フルーツ』は樹木希林さんでしたが、他にも杉浦直樹さん、舘ひろしさん、宮本信子さん……。

阿武野 杉浦さんには私がディレクターも務めた『村と戦争』(1995)という作品でナレーションをしていただきました。好きだったんですよ、杉浦さんのこと。向田邦子さんのドラマで拝見していて、あのモニョモニョっと話す感じが何とも。

――ナレーションはいかがでしたか。

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阿武野 地元の愛知県岡崎市の出身ですし、杉浦さんに頼んでよかったって心から思いました。でも実はこれが杉浦さんのナレーター初仕事だったんです。うれしかったのは『徹子の部屋』でこの番組についていっぱい喋ってくださったんです。それが、気持ちが溢れちゃって、もう何言ってるかわからないくらいで(笑)。さらに杉浦さんのこと、好きになっちゃったんですけどね。

 

――宮本信子さんは何度もご一緒されているようですね。

阿武野 10本以上お願いしていると思います。最初は『とうちゃんはエジソン』という作品でした。その当時、宮本さんは伊丹(十三)さんを亡くされてから6年ほど。まだ本格的に仕事をなさっていない頃でした。このナレーションは一人称で書いていたんですが、主人公の名前が信子さん。それで宮本さんに「私、信子……」と語ってもらったんですが、マネージャーから「これで宮本が前に出て行けるようになるかもしれない」って言ってくださったのが心に残っています。宮本さんとはそれ以来長くお付き合い頂いています。

ナレーションに有名人を起用する理由

――俳優の方にお願いしているのは、やはり声に重きを置いているからですか?

阿武野 声はもちろんですが、俳優が持っているイメージですね。宮本さんなら、チャキチャキっとした清潔な感じというように。それから、やはり知名度をお借りしてるところは大きいです。舘ひろしさんには、名古屋の市会議員を取り上げた『議会のかたち』というドキュメンタリーのナレーションをお願いしたのですが、テレビ欄に「舘ひろし」って入れられるでしょう(笑)。館さんは名古屋出身ですし、それで番組への注目度をあげることができる。ナレーション撮りの日に新聞記者を呼んで取材してもらいやすくもなる。

 

――なるほど!

阿武野 もちろん、ナレーションのうまさでお願いしていますが、みなさん番組が進むにつれて「あれ、誰の声だっけ?」と思うくらい溶け込んでしまうものなんです。それで終わった後にスタッフロールを見て、あの人だったんだ! ってもう一度思い出す。

――和田アキ子さんを起用したこともあるそうですね。

阿武野 『福祉番長!』という番組です。当初はナレーションは受けないということだったのが、当時の和田さんのマネージャーが佐藤浩市さんの付き人出身で、この話が佐藤さんのお父上の三國連太郎さんの耳に入って、たまたま私と仕事をしたばかりの三國さんが「阿武野くんの仕事なら引き受けたほうがいい」って言ってくださって実現したという……。不思議な縁の巡り合わせです、本当に。