「公開する国によってポスタービジュアルは違いますが、日本版はこの作品の世界観を端的に表したカットだと思う」
アレクセイ・ウチーチェリ監督の映画『マチルダ 禁断の恋』を表象した一枚。それは、ロシアのサンクトペテルブルクに建つ帝室専用のマリインスキー劇場の舞台で、雪白のチュチュを纏ったプリマ――主人公のマチルダ・クシェシンスカヤを写したものだ。
19世紀末、ロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世と伝説のバレリーナの禁断愛を描いた本作の見どころは、ロシア芸術そのものである。
「大聖堂のセットや衣裳のディテイルへのこだわりはもちろんあります。しかし我々が表現したかったのは、帝室の庇護の下で芸術性を高めたロシア文化なのです」
だが、「聖人」と神格化されるニコライ2世の名誉を汚す内容として、ロシアの保守派や一部の宗教組織は上映禁止を求めるなど激しく反発した。
「スキャンダラスに取り上げられることが多く、とても残念です。作品を通してバレエの素晴らしさ、皇帝一家の生活といったロシア文化や芸術への理解を深めて欲しい。この映画は、芸術作品として観ていただきたいのです」
INFORMATION
『マチルダ 禁断の恋』
12月8日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか、全国公開
http://www.synca.jp/mathilde/