写真、彫刻、演劇、建築など多彩な創作活動を展開する現代美術作家の杉本博司さん。パリ郊外、ヴェルサイユのトリアノン区域で「SUGIMOTO VERSAILLES」と題した個展を開催中だ。
「ここにはマリー・アントワネットが好んだ小トリアノン宮殿をはじめ、様々な歴史的な建物があります。それらを能舞台に見立てて、ヴェルサイユを訪れた歴史上の人物を亡霊として呼び出す。これが展示のコンセプトです」
壮麗な建物の内部にはヴォルテール、ナポレオン、昭和天皇、ダイアナ妃などの肖像写真が並ぶ。それらは、杉本さんがロンドンのマダム・タッソー館で撮影したものだ。
「マダム・タッソーはヴェルサイユ宮に仕え、フランス革命の時代を生きた蝋人形師ですから、展覧会の副題の『Su rface of Revolution』(革命の表面)とも関わりがあります。昔から写真は魂を抜くと言いますが、私が蝋人形を撮り、吸い取られた魂は抜け殻として復活を遂げるわけです」
また杉本さん設計のガラスの茶室を庭園内の池に設置するなど、日本とフランスの伝統文化を対比する面白さも。今年の秋から冬にかけてはヴェルサイユのほかに、テルアビブ美術館での個展、熱海と長崎での天正少年使節団をテーマにした展覧会、東京の建築倉庫ミュージアムでの建築展と、3つの内容の異なる展覧会を手掛けた。「4つの展覧会を同時に行うのは、長いアーティスト生活の中でも初めての経験」だという。
INFORMATION
「SUGIMOTO VERSAILLES」展
2019年2月17日まで