NYでそば打ち職人をしていたシェフ
シェフの井原和嵩さん(37歳)に少し話を聞いてみたところ、驚くことばかりだ。井原さんは2008年から2013年まで、ニューヨークのロックフェラーセンター近くの高級日本レストラン「Restaurant Soba Nippon」でそば打ち職人・料理人として働いていたというのだ。
オーナーがカナダにそば農場を持ち、玄そばを仕入れて、ニューヨークでそばの実を挽き、そばを打ち、本場のそばを提供していた。そこで、そばのイロハをすべて覚えて、そばの旨さや奥深さに「完全にハマった」そうだ。
そば料理はアメリカ人の常連さんにも人気があったという。特にそばつゆが好きなアメリカ人が多かったというから面白い。残念なことにオーナーが亡くなり店は閉店。井原さんも帰国。その後、英語も堪能でホテル業にも興味があった井原さんはGRIDSに就職した。
「鴨南蛮そば」「ボロネーゼ」も作ってみたい……
GRIDS AKIHABARAの女性支配人のキムさんは、そんな料理人としての才能があった井原さんに「料理を提供してみないか」と話を持ちかけ、今年10月からランチを始めたところだという。そして、「そばカルボナーラ」のレシピを考えついた。
「そばカルボナーラ」はアメリカのレストランで作っていたレシピではなく、井原さんオリジナルだという。「そばは茹であげて、いったん水でちゃんと冷やしてしめてから、作らないと旨くならない」そうだ。
ランチは「そばカルボナーラ」だけでなく、「タコライス」、「BLTサンド」の3種類だが、「そばカルボナーラ」が一番人気。日本人だけでなく、宿泊している外国の方にも人気が出始めているという。つい最近も、宿泊していたブラジル人のマダムが、感動して2日連続でリクエストしてきたという。
12月からは月・火曜日のみでランチを提供するそうだ。「そばカルボナーラ」だけでなく、アメリカでも人気だった「鴨南蛮そば」も提供したいし、鴨肉のミンチを使った「ボロネーゼ」も試作してみたい。「そばをGRIDSの名物にできれば……」と、井原さんは熱い思いを語ってくれた。
帰り際に井原さんの出身地を聞くと、長野県の伊那地方とのこと。信州そばの本場の地だ。「小さい時、おばあちゃんが作ったそばが好きだったんです」とそば愛のルーツを教えてくれた。
小さなホステルGRIDS AKIHABARAで、そば料理の新しい国際交流が静かにそして熱く始まっている。
写真=坂崎仁紀
INFORMATION
GRIDS AKIHABARA HOTEL + HOSTEL
東京都千代田区東神田2-8-16
ランチ営業時間 月・火 11:30〜14:00
(スタッフのシフトにより予定が変更される場合があります)