慶應で学んだことが「我慢」では悲しい
全部員がなるべく同じ方向を向くことにも心を砕いている。とはいえ、毎年200人近い部員がいるので簡単なことではないが、そこは毅然とした姿勢で部員たちと向き合っている。
「A(一軍)に言うこともC(三軍)やD(四軍)に言うことも、そんなに変わりません。ちょっとでも上手くなるためのヒントは与えるし、ダメなものはダメと言う。だから“Aチームが特別”ということにはしません」
そうした平等を尊びつつ、「神宮で勝つため」の“区別”はする。大久保監督就任以前は打撃練習の時間が希望者に等しく与えられていたが、主力選手数名の打撃時間を増やした。一方で、そうした扱いを受けた選手がいい加減な振る舞いをしていれば容赦なくメンバーから外す。上手くなるための助言やチームの士気を下げかねない行為への叱責はどの部員に対しても変わらない。
「卒業した部員がのちに『慶應で野球をやって何を学んだ?』と聞かれた時に『我慢です』と答えたら悲しいじゃないですか。だから野球の向上に繋がる考え方とか技術もそうですし、“組織はどうあるべきか”ということは全部員に伝えています。野球って奥が深くて、間があって、その中で考えがあって。脚力から腕力から、全てを持っていないと一流になっていけない。そういう“野球の楽しさ”を教えられる大人になって欲しいんです」
野球から学んだこと、野球以外の学生生活から学んだこと。その双方の尊さを知る大久保監督だからこそ、部員たちに視野の広さを持つことや成功を掴むまでのプロセス、野球の奥深さを知る大切さを伝え続けている。
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