「なんというか、弱点らしい弱点がないんですよ。東大法学部の中でも勉強はすごくできるし、野球は走攻守そろった万能プレーヤー。話をしていても、空気を盛り上げるのが上手いというか、すごく面白い。何なんだろうと思います(笑)」

 もっとも近くでその姿を見てきたであろう同級生の主務をしてそう言わせたのは、東京大学野球部の外野手・辻居新平(3年)だ。現在は法学部の3年生で法律プロフェッションコースに在籍し、司法の道を目指している。この日の取材でも、練習直後の小雨が降る中にもかかわらず「お待たせしてすみません!」と息を切らしながら爽やかな笑顔を向けてくれた。

 

プロのスカウトからも大きな注目を集める

 辻居が注目を集めるきっかけとなったのは、昨年の東京六大学野球の秋季リーグ戦だ。2年生ながらレギュラーポジションを掴むと、思い切りのいいフルスイングを武器に打率3割8厘、1本塁打、6打点と大活躍。その結果、プロのスカウトからも大きな注目を集めることとなった。

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 東大からプロ野球に進んだ選手はこれまで6人いるが、宮台康平(現日本ハム)をはじめすべて投手。辻居が野手としてプロになれば東大史上初のケースとなる。

 相手チームからのマークがきつくなったことで今年は春シーズンこそ不調に終わったものの、夏にバッティングの技術面を見直し。続く秋シーズンは再び3割8厘をマークするなど修正してみせた。

 

 身長177cm、体重80kgのがっしりとした体躯を目いっぱいに使ったバッティングは迫力満点。秋季リーグの対明大2回戦では3安打の固め打ちでチーム唯一の引き分けに貢献すると、もうひとつの持ち味である足で盗塁も決めてみせた。

「同じ打率でも全然、意味が違いますね」

「去年の秋はまだまだ先輩方についていくという感じでした。相手チームの僕に対するマークもなかったと思いますし、クリーンアップに打てる先輩がいる中で、結構思いっきりやらせてもらった結果でした。

 でも、今年の春からは、自分で引っ張りながら結果を残すことの難しさを痛感しました。その中で秋、またしっかり3割打てたということに関しては率直に嬉しいですし、一安心という想いはあります。同じ打率でも去年と今年では全然、意味が違いますね。秋は去年の冬季練習から意識していた盗塁も増えて、打撃に加えて足もアピールできたことも成長だと思います」