“初の文春野球コラム1行目”
この12文字にこんなにも時間を費やすとは予想だにしなかった。1イニング12失点。今まさにテレビ画面には延長戦で12失点というNPB記録を更新したカープと、酸欠に喘ぐ鯉のように口をパクパクさせているファンの姿が映し出されている。
ファンの怒号は分かる。しかし今は『耐えて勝つ』を座右の銘としたV1時代の名将・古葉竹識監督の言葉を胸にチームもファンもセ界王者らしく気分転換を図る、ゆとりと癒しが必要だろう。今回はそんな鯉党に向けた癒しのコラムテラピーを目指してみたい。
全国区になった『ゆるい選手CM』の癒し
劣勢続きの試合も多いが、今年のカープ観戦には癒しが生まれた。全国の視聴者が観るBS中継に広島ローカルのゆるいCM『カピバラ三兄弟(今村・大瀬良・一岡)』が流れることだ。
多チャンネル時代はついに広島特有の『カープ選手×ゆるい広告』という独自文化を全国に運び始めた。実は広島エリアではレギュラーに定着していない選手も売れっ子タレントばりにCM起用されており(※表参照)昼夜さまざまなメディアで露出。これが熱狂的なカープ愛と人気選手を生み出す一助となってきた。
なにせ街ですれ違えば道をあけてしまう屈強な大男たちが、カピバラと呼ばれたり、ゆるい踊りを披露したり、ママチャリに乗って眼鏡を買いに行ったりする。この大いなるグラウンドとの“ギャップ萌え”は好感と親近感を呼び、その感情は球場での歓声となって選手らに降り注ぐという好ループを生んできたのだ。
CMだけではない。カピバラ兄弟の次男・大瀬良大地の『県民税』のように、東京だとオスカープロモーションあたりの美少女が起用されるであろう公共広告もカープ選手が代々引き継いでいる特性がある。
例えば、前田健太は『許すな!自転車盗難』という県警の広告、丸佳浩は『薬物は✕(バツ)!! 僕は〇(マル)!!』というダジャレに二度見してしまう危険ドラッグ禁止の広告、最近だと下水流昂の『広島の外野は下水流が守る。広島の浸水は下水道が守る』という抜群にゆるい下水道局の広告がそれだ。