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頼れる「石山本願寺」、どうか軽傷でありますように……

 冒頭で本人が語っていたように、クローザーは責任重大だ。先発、中継ぎ投手が必死に守り抜いたリードを自分が台無しにしてしまうことだって当然ある。たとえば、昨年8月23日、マツダスタジアムで行われた対広島東洋カープ戦。最終回に登板した石山は、三番・丸佳浩、四番・鈴木誠也に連続ホームランを浴びて、まさかの4失点。チームは敗れ、先発・原樹理の勝ち星を消してしまった。

「クローザーに必要なことは、引きずらないこと。でも、この試合はずっと引きずっています。それでも、毎日試合はあるので、相手に向かっていく意識は忘れないようにしています。やっぱり、打たれると気持ち的に引いちゃう部分が出てくるんですけど、そこは逆に攻めていかないと相手に呑まれてしまうので、“当てても仕方ない”ぐらいの強い気持ちで攻めるようにしています」

 今季も悔しい試合はあった。3月29日、阪神タイガースとの開幕戦では1対1の同点で迎えた延長12回裏に登板したものの、一死三塁のピンチを作ると、近本光司にまさかのワイルドピッチ。開幕早々、敗戦投手となった。あるいは、4月6日の対中日ドラゴンズ戦では9回二死まで抑えたが1点リードを守り切れずに失点し、先発した石川雅規の勝ち星を消してしまったこともあった。それでも、チームからの信頼はまったく揺らいでいない。

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 4月30日の対横浜DeNAベイスターズ戦では1点リードの延長10回、3つのアウトをすべて三振で奪う力投を見せた。5月6日現在、すでに15試合に登板し、1勝1敗7セーブ、防御率1・26という圧倒的な成績を見せている。ファンの間では、敬意を込めて、「石山本願寺」、あるいは「和尚」と呼ばれる不動のクローザーは笑顔で語る。

「ファンの方から、《石山本願寺》と呼ばれているのは知っていますよ。“どうぞお好きに、何とでも呼んでください”(笑)。全然イヤではないですけど、《おい、本願寺!》って呼ばれても、決して振り向きはしないと思います(笑)」

 間違いなく、高津臣吾、林昌勇、トニー・バーネットと続く「スワローズクローザーの系譜」に、その名を連ねる石山泰稚。淡々と自らの仕事をこなし、黙々と自身の役割に徹する頼れる「和尚」。僕は信じる。今年も昨年同様の活躍を見せてくれるはずだ、と。しかし、「上半身のコンディション不良」という漠然とした説明がさらなる不安をあおる。どうか、肩やひじの異変でありませんように。悲願の日本一奪取に、石山の右腕は絶対に欠かせない。どうか軽傷でありますように。祈ることしかできない自分がもどかしい。それでも僕はただ、祈ることしかできないのだ……。

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