「賢介選手最後」が目白押し
いま、北海道で解説者として活躍されている方たちは一緒にユニフォームを着た賢介選手の先輩が多くいます。田中幸雄さんは賢介選手の最初のキャンプで同部屋だったそうです。まだ高校生だった彼のあどけない表情や行動は可愛くて忘れられないと微笑みます。
建山義紀さんの家のワインセラーには、引退後にあける特別な1本がもう用意されているそうです。岩本勉さん、森本稀哲さん、稲田直人さん……すべての皆さんがかわいい後輩のラストイヤーを丁寧に伝えようとしているのが言葉の選び方から試合ごとに伝わってきます。
二遊間を組んだ金子誠さんはコーチとして一番近くからラストイヤーを見守ります。チームでの二遊間の関係は、成熟したどちらかが引っ張り、どちらかがぐいぐいと引っ張られ必死についていくことで成長していく、その繰り返しが理想と聞いたことがあります。ショート・田中幸雄選手と、セカンド・金子誠選手。ショート・金子誠選手と、セカンド・田中賢介選手。セカンド・田中賢介選手と、ショート・中島卓也選手……。
入団会見で「いつか福岡の先輩でもある田中賢介選手と二遊間を組みたい」と言った中島選手は、夢を叶え、選手会長も務め、いまや今度は自分がセカンドを引っ張っていく立場に。そのセカンドの後継を狙う渡邉諒選手は「しっかり活躍して賢介さんが心配なく引退出来るように。レギュラーを取ることで恩返しがしたい」と頼もしい。ポジションに関わらず、どの選手もすぐそばで学べる、聞きたいことはすぐに聞ける、そんな貴重な毎日です。
2018年12月25日、あの日から賢介選手とのラストイヤーが始まりました。「平成最後」という言葉が令和になるまでよく使われましたが、ファイターズファンには今年は「賢介選手最後」が目白押しです。キャンプ、オープン戦、開幕戦はもう終わってしまいました。これからは地方球場、終盤になればそれぞれの球場でのカードに「賢介選手にとっては最後の……」と枕詞が付きます。ひとつひとつに心構えをすることが出来るのは幸せです。せっかくもらったプレゼント期間、有効に、そして悔いのないようにしたい。
近々の「賢介選手最後」は次の月曜日。ファンが「賢介選手のお誕生日」として、5月20日を祝えるのはこれがラストです。おっと、試合がない……。なんとか……なりません……よね……。
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