こころもちが違うのです。今シーズンはいつもと少し違うのです。だって私たちは去年のクリスマスにプレゼントを貰ってしまったから。あと1シーズンだけ応援できる、そんなプレゼントをもう受け取ってしまったから。悔いを残してはならない。

田中賢介からの想像していなかったプレゼント

 田中賢介選手が20年目のシーズンを迎えています。東福岡高校から1999年のドラフト2位で入団、一軍に定着したのは高卒7年目の2006年のこと。北海道のチームとして初めて優勝し日本一になったシーズンです。あの年は今でもやっぱりどこかスペシャルで、なんとなくのスタメンも頭の中にすっと出てきます。

 1番・レフト・森本、2番・セカンド・田中賢介、3番・ファースト・小笠原、4番・DH・セギノール、5番・ライト・稲葉、6番・センター・SHINJO、7番・サード・マシーアス、8番・キャッチャー・鶴岡、9番・ショート・金子誠、そして先発ピッチャーはダルビッシュ……みたいに。

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 賢介選手はその中でも若手で、田中姓はもう一人、田中幸雄選手がいたので、チームメイトもファンも下の名前で呼ぶことが多くて、今でも打席の場面でスタンドから叫ばれる「けーーーーんすけーーーー」はその象徴でもあります。

20年目のシーズンを迎えている田中賢介 ©文藝春秋

 その後、がっちりとレギュラーを掴み、選手会長も務めあげ、アメリカに渡り、ファイターズ復帰、再び日本一になった2016年はフル出場と実績を積み上げていきます。でも、2017年の後半くらいからは徐々に出番が減ってきました。

 去年はベンチの後方で戦況を見つめる姿が多く、最初はそれが違和感だったのに、気が付けば私はその絵面に慣れてしまっていて、そう思うと、なんだか賢介選手までもそれに慣れてしまっているように見えて、そろそろあの言葉を聞く覚悟をする必要があるのか……いやいや、まだ早いでしょう、と揺れるファン心。

 そして始まる2018年オフの契約更改。チームからマスコミに届く交渉スケジュールのリストに賢介選手の名前はありませんでした。これは何を意味するんだろう、やはりあの言葉を聞く覚悟をする必要があるのか……いやいや、単純に家の事とかで忙しいのかもしれない、まさかチームとお金の折り合いがつかない? ……とか勝手に揺れるファン心。

 ファンフェスも終わり、12月に入り、やっとチームから「田中賢介選手会見」のリリースが届いたのは年末、その日程は、12月25日のクリスマスでした。内容はズバリ、引退会見でした。だけどそこにはファン心が想像していなかったプレゼントが添えられていました。「来シーズン限りで」というプレゼントが。

「早めに言った方が、周りに気を使わせなくて済む」と賢介選手は言いました。それは同時にその周りからすれば、「早めに言ってもらえたので、賢介選手との日々を意識を持って大切に出来る」ということ。今までにはなかった計らいでした。