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巨人・亀井善行のプレーが、誰もの心を打つ理由

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/05/25
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柔軟で何でも吸収する貪欲さ

 打てなければ人目も気にせず、神頼みだってする。無安打が続いたある遠征先での試合後。食事に向かう途中、ある場所に立ち寄った。正月に人でにぎわうわけでもない、パワースポットで知られるわけでもない、本当に誰の家の近くにでもあるような、小さな神社。そこで大きな体を丸め、目をつむり、両手を合わせた。まるで受験生やプロポーズに行く前のよう男性のように必勝祈願。本当に翌日のゲームでホームラン。ご利益は確かにあった。ダイヤモンドを回ってベンチに戻るとこっそりと手を合わせて、野球の神様に感謝していたのが今でも脳裏に焼き付いている。

 野球はメンタルのスポーツともいわれるが、心理的アプローチでバッティングを変革したこともある。メジャーでも取り入れられている「ブラインドショット」という秘策だった。ボールを打とう打とう、とするのではなく、ただバットの芯に当てることだけを考えて、ミートした後の結果は考えずに遮断するというもの。結果は打球に聞いてくれ、と無心になって白球を捉えることだけに集中。「俺にとってブラインドショットは魔法だった」と新たな感覚を得ていた。良い意味で変なプライドはなく柔軟で何でも吸収する貪欲さがあった。

 24日の広島戦で、カープの背番号5が代打で登場した。巨人時代、亀井善行のポジションを脅かした、長野久義だ。シーズンが終われば即戦力のルーキーが加入してくるだけでなく、陽や丸のように、毎年、他球団から移籍してくる看板選手と定位置の座を争わなくてはいけない。ケガとも戦い、スター軍団ともしのぎを削る。苦難をぼやくこともなければ、置かれた環境を恨むこともない。チームにとってもファンにとっても、野球に興味のない人たちにとっても。万人の心のよりどころ。それが、私が虜になった亀井善行という人間である。

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