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あの日、巨人・有田修三のヘッドスライディングに感じた“オトコのロマン”

文春野球フレッシュオールスター2019

2019/07/11
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オトナになった今でも不意に蘇るあの瞬間

 そして事件から33年の月日が流れた。

 事件の2年後に東京ドームがオープン、BIG EGGなんて呼ばれたが今ではもう誰も呼びはしない。

 球場以外だと茶の間からブラウン管越しにしか観ることができなかったプロ野球も今では仕事帰りの通勤電車内でスマホを使えば簡単に観れる。または、仕事中であっても、つまらない合コンの途中であっても、スマホアプリの一球速報なら試合結果を確認することができる。

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 そしてすっかりオッサンになった俺は、最寄り駅から自宅への帰り道、コンビニで買った酎ハイ片手にアプリの一球速報をチェックする。チャンスで阿部慎之助がバッターボックスに入る。ほろ酔い気分で「あっ、慎之助セーフティバントしないかな……」なんつって妄想にふけりながら。

 それでも時効だなんて言わせない、俺の「オトコのロマン」メモリアルゲームが日々の生活の中で不意に自分の心に蘇ってくる瞬間がある。

 今でも、何かのチャンスが来たのなら、いや、待っていてもオッサンにチャンスはなかなか回ってこないから、時にタイミングを見計らい、時に自分で自分を鼓舞しながら、今がチャンスだと自分自身にヘッドスライディングをかましていく俺から俺へのセーフティバント。

 どうだ、これが年を重ねるということだ。こんな今の生活を自分では少しだけ気に入ってもいる。

 令和元年、7月。セーフティバントは足が遅くたってやってみることは自由だということを今の私は知っている。

 ありがとう。俺の「オトコの初ロマン」。メモリアルゲーム。

◆ ◆ ◆

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