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「憲法改正の実現こそ安倍政権の悲願」という安倍政権のコアな支持層からの声もあるが、実際は、「政策の実現」よりも、「政権の維持」が自己目的化しているかのようだ。

片山 「生前退位」に消極的だったはずの安倍政権も、最終的には「令和改元」をうまく利用したわけですね。「厳しい寒さの後に咲く梅の花のように」などと首相みずから新元号の解説までして、この改元が安倍政権の継続に寄与してしまった面があります。だとすると、安倍政権は一体、いつ終わるのか。

御厨 それこそ天皇陛下ではないけれど、安倍さん自身が辞めると言わない限りは続くのでしょう。

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即位礼正殿の儀で万歳三唱をする安倍首相 ©AFLO

これが“平成30年間の政治改革”の帰結だ

 では、なぜこんな事態に至ったのか。

御厨 振り返ってみると、今の安倍政権の“永続化”は、この平成30年間の「政治改革」とも大いに関係しています。

片山 「政治改革」が目指したのは、「二大政党制」と「官邸主導」ですね。平成初期の1994年に、中選挙区に代わって小選挙区制が導入されます。そこで有権者は、マニフェストや公約の達成度を見て「次はこちらにしよう」などと投票することが期待され、政権の方も、3、4年で政策を実現するために、従来の官主導の調整型政治ではなく、むしろ官邸主導で官僚にプランを降ろしていくことが期待されました。

片山杜秀氏 ©文藝春秋

御厨 まさにそうした改革が、橋本内閣の行革以来、平成期を通じて積み重ねられてきたわけですが、良くも悪くも、その帰結が今の安倍政権であるわけです。

片山 建前としては「二大政党による政権交代」を目指していたのに、民主党が悪かったのか、そもそも日本の政治風土と合わなかったのか、あるいは何か別のやり方をすべきだったのか、「二大政党」はいまや影も形もありません。残ったのは、強力な「官邸主導」の長期政権だけです。

「歴代最長政権」も、何も安倍さんや菅さんが一代で築いたものではなく、冷戦終結後の小沢さんや政治学者も含めたさまざまなアイデアを今の政権が独り占めした結果に見えてきます。

御厨 悲しいかな、これが“平成30年間の政治改革”の帰結です。しかも今のところ、他に代替物が見当たらない。今の政権は、もう何もしないで自動的に回っているようなものです。

出典:「文藝春秋」12月号 

「親アベ」でも「反アベ」でもない視点から「歴代最長政権」の実態を看破した両氏の対談「安倍政権は『桂園時代』に似ている」の全文は、「文藝春秋」12月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

文藝春秋

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安倍政権は「桂園時代」に似ている