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大学進学後も野球部マネージャーを全う

 そして大学は内部進学で国学院大に進むことも決めた。高校でアドバイザー、大学で総監督を務め、東北高・仙台育英高で甲子園通算30勝を挙げた竹田利秋氏の下でさらに学びを深めたい気持ちもあった。

「年下なのに自分の意見を立ててくれるし、“こういうことも大事だぞ”と意見も言ってくれるんです。そうすると考えの幅が広がるんです」

 大学に入ってからは野球の競技歴が無いことへの劣等感や先輩との衝突から退部を考えた時もあったが、鳥山泰孝監督には「もう1日考えてみろ」と諭され、竹田総監督と母親からは「内容は覚えていないです(笑)」というほど叱責され思い止まることができた。

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 大学ではタイムマネジメント、OBや訪問者への対応、練習試合の調整、部費の管理などその仕事はさらに多岐にわたり多忙だった。それでも4年間を全うすることができたのは「やっぱり優勝したかったからですね。特にいつも支えてもらっていた自分たちの代で絶対優勝したいという気持ちでした」と話す。

 こうした部分は高校の尾崎監督も「チームが勝つこと、勝てるチームにすることに対しては人一倍情熱を持っていましたね」と評する。

 また、大学の鳥山監督も「叱ったことの方が多いですけど、最後の1年間は特に先回りして気を利かせて仕事をしてくれました。今どきの子には少ない“何かをしたがる、何かをしようとする”良さがありましたね」と振り返る。

 そして「自分を押し通してしまうことも当初はあったですけど、その押し引きの重要性は私も説いたつもりです。いろんな壁にぶち当たる時もあると思いますが、マネージャーをやりきったことで考える力・乗り越える力はついたと思いますね」と語った。

高橋は今後、仕事の合間にタグラグビーなど楽しんでいく意向だ ©高木遊

 大学卒業後の今春からは食品卸しの職に就く。グルメだった祖母の影響でバイヤーになることが第一志望だった。

「ラグビーと野球両方を経験し、人との縁でここまで来られました。だから、これからも縁は大切にしたいですね。これまで監督と選手、チームと学校の間に入って仕事をしてきて、これからはメーカーさんと小売業者さんの間に入ることになる。これまでの経験を生かしていけたらなと思っています」

 これから始まる社会人生活では、ラグビーの楕円球のように予測不能に転がった学生生活が大いに役立つことになりそうだ。

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