ほろ苦いデビューも……
「プロでの最終目的地は日本中の人に笑顔を与えることです。ショートでレギュラーとして日本一になって、MVPをとる。沢山のイベントに出て野球を教えたり、施設訪問して笑顔になってもらいたいです。そのためには毎日笑顔で人と話したり誰よりも地道な努力をすることが必要だと思います」。まるで変声期前の少年のような優しい声。幼さを感じる口調だが、語った夢はルーキーとは思えないほど鮮やかに描けていた。幼少期、球場へ行くたびに笑顔になって帰宅していた自身の体験が遠藤にプロ野球選手としての夢を植え付けていた。
3月7日。井上と共に甲子園の土を踏んだ。7回から遊撃の守備につくと8回には打席に立った。初球138キロの直球を見逃して1ストライク。続く低めのカーブを空振りして2球で追い込まれるとその後の5球目の直球を空振り三振。ほろ苦いデビューとなった。「初球を振れなかったことが一番悔しい。振る勇気を持たないといけないです」。
遠藤は東海大相模の旗印である“アグレッシブベースボール”を大切にしている。三振したことではなく、初球にバットが出なかったこと、積極性を欠いたことが一番の反省点となった。翌8日の巨人戦も7回から遊撃の守備につき8回に打席へ。結果は空振り三振だったが、この日はファーストストライクをフルスイングした。それでも「泣きそうなくらい悔しいです」。帰寮後も室内練習場でバットを振り続けた。
タイガースファンに見てもらいたいアピールポイントを「泥臭さです」と話す18歳。高校時代から使うグラブにはそのまま“泥臭く”と刺繍が施されている。将来から逆算すると1年目の今年は「ファームで首位打者になる」のが遠藤の中での最低条件だという。「阪神ファンを喜ばせられるように頑張ります!」。It’s 勝[笑]Time! 矢野阪神にぴったりな新星が現れた。
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