文春オンライン

1999年の井口資仁 思い出の一発を生んだ王監督からの“短いアドバイス”

文春野球コラム2020 90年代のプロ野球を語ろう

2020/04/02
note

 忘れられないもう1本は、優勝までマジック1で迎えた9月25日のファイターズ戦。4-4の同点の8回。二死走者ナシから相手投手のスライダーを右翼スタンドに運んだ。

「変化球でカウントを取ってくるのが分かっていたので、完全に変化球を狙っていた。スライダーに照準を絞って確実にとらえた一発」

 当時の事をまるで昨日のことのように事細かく、そして確実に振り返る事が出来るのが超一流選手に共通する特徴だ。この勝ち越しの1点を守り切ったホークスが初優勝。井口にとってもプロ入り初の優勝となった。博多の街が歓喜に包まれた。

ADVERTISEMENT

一番大事なのは開幕した時に最高のパフォーマンスを見せること

 マリーンズに移籍をした09年も衝撃的な一発を打ち続ける。4月7日のファイターズ戦(東京D)で移籍後初本塁打。2号本塁打は4月16日のイーグルス戦(千葉マリンスタジアム 現ZOZOマリンスタジアム)。延長10回に豪快にサヨナラの満塁本塁打を放った。その後も毎年、様々な感動と衝撃を野球ファンにプレゼントし続けた。それでも本人は「ホームランバッターではないから」と謙虚な言葉を残し17年限りで現役を引退し18年に若くして千葉ロッテマリーンズの監督に就任をした。

 優勝に向けて万全の状態で迎えるはずだった監督3年目の20年。目標としていた開幕は新型コロナウィルス感染予防の観点から延期となった。当初、予定されていた3月20日のホークス戦(PayPayドーム)が3月9日に中止が決まり、次の目安としていた4月10日のファイターズ戦(札幌ドーム)も3月23日に中止と先行きはいまだに不透明だ。

「安全面を考慮しての決定ですので、仕方がないとしかいいようがありません。開幕が延期となるのは非常に残念ですが、我々は気持ちを切らさず、新たに設定されることになる開幕日に向けて備えていくだけです。こういう時だからこそプロ野球は明るい話題をファンの皆様に提供しなくてはいけないと思いますので、開幕した時には最高のパフォーマンスをお見せできるように選手、スタッフと一丸となって頑張っていきます」

 開幕延期に関して井口監督はそのようにファンにメッセージを発信した。閉塞感の漂う日々。しかし、だからこそプロ野球は、そして千葉ロッテマリーンズは明るい話題を提供しなくてはいけない。今はSNSを通しての情報発信など行えることは限られているが、一番大事なのは開幕した時にファンを喜ばせる最高のパフォーマンスを見せることだ。現役時代に数々の感動をファンに提供してくれた井口監督は、きっと指揮官としてこの困難な状況の中で始まる新たなシーズンで、現役時代に見せた数々の特大アーチのような感動を生み出してくれるだろう。だから、その日が来るのを今は楽しみに待っていて欲しい。我慢をした分だけの感動と喜びをプロ野球は、千葉ロッテマリーンズは、そして井口資仁は提供をすることを約束する。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム2020  90年代のプロ野球を語ろう」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/36989 でHITボタンを押してください。

HIT!

この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。

1999年の井口資仁 思い出の一発を生んだ王監督からの“短いアドバイス”

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー
文春野球学校開講!