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──つまり、現在のクラスター対策だけでは無症状感染者を把握できないために、感染拡大阻止に限界がある。だからこそ、PCR検査を医師の判断で迅速に行えるようにすべきだということですね。

実際の感染者は「発表人数の12倍ほど」か

徳田 はい。現在、日本では厚労省の手引きに基づいて、曝露歴あり(感染者に接触した人)かつ発熱または呼吸器症状や、原因不明または増悪する肺炎など、新型コロナウイルス感染症を強く疑う症状のある人を中心にPCR検査が行われています(参照:「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」)。

 その後、「医師が総合的に判断した結果、新型コロナウイルス感染症を疑う」という要件が追加されましたが、「実施に関しては保健所へ相談すること」となっています。ところが、なかなか保健所に電話がつながらない、あるいは断られるといった実態があり、多くの医師は「軽症では検査はやらない」と決めています。そのために、事実上、発熱のない咳、嗅覚低下、味覚低下などの軽症者は検査されない流れとなっているのです。

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 しかし、もともとこの感染症では、軽症者が約80%もいることがわかっています。すなわち重症者の約4倍です。しかも、仮にPCR検査の感度(感染者を陽性と正しく判定できる確率)を70%程度、すなわち約3分の2とすると、偽陰性(感染しているのに、陰性と判定され見逃されること)が約3分の1になるので、感染者は検査で陽性となった人の約1.5倍いることになります。

 そのうえ、前述したように軽症者を含めた全症状者の最低約2倍は感染者がいることを考慮すると、現在顕在化している陽性感染者数の1.5(偽陰性による見逃し)×4(検査されない軽症者)×2(無症状)=12倍は感染者がいると考えるべきなのです。

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もはや東京は誰が感染しているかわからない状態

──そうすると、東京では4月7日に累積感染者が1195人と発表されましたので、その12倍の1万5000人近くの感染者がいる可能性があるということですね。

徳田 その通りです。しかも、軽症感染者や無症状感染者は普通に動けますので、多くの人に感染を広げている可能性があります。これだけ増えると非典型例もみられています。脳梗塞や急性心筋梗塞で救急入院された患者を治療してみたら、その後肺炎が明らかになったのでPCR検査をすると陽性だった、という例が国内でも出ています。

 日常診療に携わっている私も、新たに受診する患者さんのうち誰が新型コロナウイルスの感染者かわからないので、初診外来では注意しながら診察しています。とくに東京は、もはや誰が感染しているかわからないという前提で、対策をとるべきなのです。

──そのためにも、PCR検査の抑制政策をやめるべきとのご提言ですが、PCR検査は検査前確率が低い(感染者の割合が少ない)集団に行うと陽性的中率(感染者を正しく陽性と判定する確率)が低くなり、「偽陰性」だけでなく「偽陽性」の人も大量に出てしまいます。それでもたくさんの人に行うべきですか?(詳しくはこちらの記事を参照:「なぜワイドショーは解説しないのか? 『PCR検査をどんどん増やせ』という主張が軽率すぎる理由」)