1ページ目から読む
5/6ページ目

徳田 1例でも医療スタッフや患者さんに感染者が出ると、そのなかから重症者が出たり、その病院やクリニックがシャットダウンする恐れがあります。そうなると、医療崩壊が加速してしまいます。病院やクリニックには、他の病気で通院が必要な患者さんもいます。ですから、感染疑いの人が、検査のために一般の病院に駆け込んではいけないのです。

感染拡大を防ぐには「ソーシャル・ディスタンス」しかない

──コロナに感染していることが判明したお笑いトリオ・森三中の黒沢かずこさん(41)も、味覚や嗅覚に異常が出て PCR 検査を受けるまでに、複数の医療機関を受診したと報じられています。なかなか検査してくれず、心配になった黒沢さんがいくつもの医療機関を回った気持ちはわかります。ですが、そんなことをしなくても、すみやかに検査を受けられる体制をつくることが重要ということですね。

徳田 その通りです。一刻も早く、実現してほしいと願っています。しかし、東京などでは感染者が増え過ぎて捕捉しきれる状態ではなく、検査を増やすだけでは感染拡大を抑制できないでしょう。感染拡大を止めるには同時に数週間は都市を封鎖したり、生活必需品購入以外の外出を禁止したりする以外ないと思います。

ADVERTISEMENT

 実際に、人々に免疫がなかったインフルエンザで、ワクチンや治療薬もなかった時代に出現した「スペイン風邪」のパンデミック(1918~1920)のときの介入では、ソーシャル・ディスタンス(人と人の距離を取ること)以外に、感染拡大を阻止できたエビデンス(科学的根拠)はありません。

小池百合子都知事 ©AFLO

「三密さえ避ければ良い」という誤解

徳田 専門家会議が「三密(密閉・密集・密接)」を避けるよう呼びかけていますが、三密さえ避ければ感染しないかのように誤解されかねず、かえって危険なのではないかと私は考えています。とくに東京では、感染拡大を阻止するためにも、今は「ステイ・ホーム(家にいること)」などの強力なソーシャル・ディスタンスがもっとも重要なのです。

 法律上、政府は「要請」しかできないかもしれませんが、強力な台風による大災害や大地震の津波のときに出される「避難勧告」のような、パブリックヘルス的な意味でのもっと強いメッセージを出すべきだと私は考えています。

 私が参画している「Choosing Wisely(医療を賢く選択して、過剰な医療を減らそうという世界的な医療運動)」の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する推奨」も、 ぜひ参照いただければと思います。