先に給付と補償を決めておくべきだった
舛添 ところが、おそらく安倍首相の秘書官が「法律がないとできませんよ」と囁いたのでしょう。だから改正法という案が出てきたわけです。法律を変えれば、「せっかく“伝家の宝刀”を作ったのだからこれを使わないといけないな」となる。それで緊急事態宣言をするに至った。
緊急事態宣言なんかをする前に、もっとやるべきことはたくさんありました。まさにトリアージやPCR検査などがそう。これらは緊急事態宣言をしなくてもできることでしょう。法律を変えることが大切なのか、国民の命を守ることが大切なのか。安倍政権がやっていることは、まったくもって本末転倒です。
――緊急事態宣言による自粛要請は、経済へ与える影響が大きいと思われます。
舛添 自粛要請によって、日本経済は危機に陥るでしょう。すでに倒産した企業がいくつか出ていますし、失業者も今後増えていく。政府は「108兆円の緊急経済対策を打つ」と自信満々に言っていますが、実はそのうち真水はわずか39兆円。GDPの1割にも満たない金額ですから、効果はほとんど期待できないでしょう。
さらに最近になって与党間で「1世帯30万円給付」とか「一律10万円給付」などと議論がなされています。これは果たして自粛要請をした後に悠長にする議論でしょうか。すでに営業できなくなり、食っていけなくなる人が出ているんですよ。本当に国民のことを考えるのであれば、給付や補償の話を決めてから緊急事態宣言をするべきでした。
トランプのコロナ対策は何が間違いだったか?
――各国の状況はどうでしょうか。たとえば、アメリカは3月13日に国家非常事態宣言を出しました。
舛添 アメリカの新型コロナの対応は後手後手に回っています。あっという間に感染者数は世界一になってしまいました。アメリカと日本の状況は、非常に近いと思います。
トランプ大統領は、何がダメだったのでしょうか。ひとことで言うならば、感染症対策に政治的イデオロギーを持ち込んでいることだと思います。感染症対策は、科学・医学・疫学でやるべきで、イデオロギーは絶対に持ち込んではならない。そのタブーを犯したから失敗したのだと思います。
「オバマケアは廃止する」「民主党時代のものは負の遺産」
トランプは一貫してこう言っています。今回の新型コロナ問題で、オバマケア廃止により無保険者が増加傾向にあることは、事態を悪化させています。だがそれを認めようとはしません。
そして、今回の新型コロナに関しても、3月10日の段階で「たいしたことではない。すぐに終息する」などとタカを括っていました。ところが、感染が拡大してくると「チャイナ・ウイルス」と差別的な発言をしたり、WHOを非難したり、責任転嫁をするような言動に出ています。