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「講談もプロレスも、ジャンルを盛り上げるのは異種格闘技」――神田伯山×柳澤健 異種格闘対談#2

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女子プロレスラー「旧姓・広田さくら」が凄い

伯山 笑点から離れて、いまのプロレスについてお聞きします。柳澤さんから見て、この団体がオススメというのはありますか?

柳澤 ひとつしかないですよ。団体じゃなくて、旧姓・広田さくらを見てください。

伯山 あ、柳澤さんがファンクラブの会長をやっているという女子プロレスラーですね。

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柳澤 よく知っていますね! そうなんですよ。広田さんは結婚して旧姓・広田さくらという名前になりましたが、いまはエリザベス王座というタイトルを獲って、旧姓・広田エリザベスさくらと期間限定で改名しているんです。旧姓・広田エリザベスさくら公認ファンクラブのツイッター(@sakurahirotafc)は僕が全部書いてます。中の人です(笑)。

 

伯山 (迫力に圧倒されて)その広田さくら選手なんですが、いわゆる正統派ではなくて。どちらかというとおちゃらけてるというか。そういう方面での天才的なひとじゃないですか? そういう色物のようなレスラーを最初にオススメしてくる柳澤さんっていうのもまたなんというか、逆に凄さを感じますよね。

柳澤 凄いのは、僕じゃなくて広田さんです。本当にもう、素晴らしい!

「格闘技とプロレスを分けた」棚橋の功績

伯山 (笑)。じゃあ広田さくら的なものを求めてないファンには、誰のプロレスがオススメですか?

柳澤 新日本プロレスの棚橋弘至じゃないですか? 

伯山 あれ、急に王道になった(笑)。柳澤さんにとって棚橋さんというのは、すごく魅力的な人ですか? 

柳澤 アントニオ猪木を完全否定できたのは、棚橋ただひとりでしょう。格闘技とプロレスは別物だと。新日本プロレスに存在する「プロレスは最強の格闘技」という幻想を捨て去ることが、新日本プロレスの生きる道であると主張した。新日本プロレスは棚橋の新しい思想の下で再出発して、猪木から完全に脱却した。猪木から脱却できなければ滅びるだけだ、と棚橋は考えました。

伯山 「格闘技とプロレスを分けた」ということですね。まるで思想家だ。

柳澤 そうです。僕は「Number」で14年ぶりにプロレス特集をやったときにはじめて棚橋選手に会ったんです。巻頭インタビューをした時に聞いたんですよ。棚橋選手は学生プロレス出身ですけど、「学生プロレスと新日本プロレスがやっていることは本質的にはなにも変わりません」と。