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難問「目の前にいる相手の配偶者の呼び方」の答え

 3つめの答え、すなわち、目の前にいる相手の配偶者の呼び方は簡単ではありません。相手に向かって「あなたの夫は元気ですか」「妻によろしく」とも言えません。「ご夫君」「ご夫人」もおかしい。実際には、やはり「ご主人」「奥さん」が多いでしょうね。

「それでいい」という人は、それでいいんです。繰り返しになりますが、この文章は、あえて「ご主人」「奥さん」を避けるにはどうしたらいいかを考えています。

 私の場合、よく知らない相手に使うのは「ご家族」です。たとえば、おみやげを渡すとき、「奥さんとお召し上がりください」ではなく「ご家族でお召し上がりください」と総称を使います。

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 実際の社会生活では、そもそも相手の家族構成も分からない場合が普通です。相手は独身かもしれないし、配偶者と離別、死別しているかもしれない。「ご家族」なら、ペットも含まれるし、カバーする範囲が広いのです。

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 相手とある程度親しくなったら、あまりこなれない言い方を使っても許してくれるでしょう。たとえば、「おつれあい」という表現。初対面の相手には使いにくいけれど、お互い気心が知れていれば、このような耳慣れない表現でも受け止めてもらえるはずです。

「夫さん」「妻さん」もあり

 特に親しい間柄ならば、さらに冒険して、「夫さん」「妻さん」もありえます。

 最近、SNSの文章を見ていると、この「夫さん」が出てくるんですね。「夫さんの病気が回復しますように」「夫さん、いいこと言いますね」など。先の水本光美さんの論文でも、このことは指摘されています。妻のことはさしずめ「妻さん」ですが、私が見るかぎり、例は「夫さん」より少ないようです。

「夫さん」「妻さん」は、公的な場ではまだ使いにくいことばです。でも、SNSの書きことばとしては根付きつつあるし、話しことばでも、親しい仲間同士の会話ならば、冗談半分に使えそうです。人の家庭のうわさ話をするときだって、「山田さんちの夫さん」と言えばいいのです。

 配偶者の呼称の問題は、「ひとつだけの言い方を選ばなければならない」と考えると、答えが出ません。改まった場合に使う言い方、初対面の人に使う言い方、気心の知れた同士の言い方など、分けて考えると、問題が簡単になります。時と場合に応じて、たくさんの選択肢を用意しつつ、うまく使い分けるのがいいでしょう。

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