夫や妻、つまり配偶者をどう呼べばいいかという問題は、昔からあちこちで繰り返し論じられてきました。いろいろと複雑な問題ではあるのですが、その要点を言えば、「4つの言い方を回避するにはどうすればいいか」ということに尽きます。

 4つの言い方とは、すなわち「主人」と「家内」(以上、自分の配偶者)、そして、「ご主人」と「奥様」(以上、他人の配偶者)です。これに「旦那」「旦那様」が加わることもあります。

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「主人」も「家内」も、べつに回避しなくてもいいじゃないかと思われるかもしれません。それも一理あるので、そう思う人にとっては、話はここで終わりです。

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 一方、「主人」は夫が中心であるように感じられる(「旦那」もいくぶんそう感じられる)、「家内」や「奥様」は家庭の中に押し込められている感じがする、という人もいます。

 相手も自分も特に気にしない場合ならともかく、相手か自分か、どちらかが引っかかりを感じるならば、別の自然な言い方を模索するのも必要なことです。今回は、その言い方を考えてみます。

 この問題は、大きく3つの場合に分けると論じやすくなります。1つめは、自分の配偶者を指す場合。2つめは、第三者の配偶者を指す場合。3つめは、目の前にいる相手の配偶者を指す場合です。

自分の配偶者は「夫」「妻」

 1つめの「自分の配偶者を指す場合」は、話が簡単です。「主人」「家内」の代わりに「夫」「妻」を使えばいいのです。

 配偶者の呼称問題に関しては、水本光美さんの最近の研究があります(『日本語とジェンダー』17号、2017年。こちらから読めます)。それによると、少し前までは、「主人」「家内」は自分の配偶者を指す呼び名のスタンダードでした。

 ところが、21世紀に入ってからは、「夫」「妻」を使う人が優勢になっています。自分の配偶者に限り、すでに「主人」「家内」は避けられているのです。

 もっとも、俳優でタレントの秋元才加さんは、ツイッターで次のように述べます。


 おっしゃるとおりで、気楽な友人同士で「夫は……」と言うのはやや硬いかもしれません。「彼は……」も自然だと思いますが、気取っていると感じる人もいるかも。

 でも、これは時と場合で使い分けることで解決できます。秋元さんは〈場所によっては〉〈人によっては〉と述べています。相手によって、「夫」と表現したほうがいい場合、「彼」と表現したほうがいい場合があるということです。

 いきなり「彼」だと違和感を持つ人に対しては、「私には夫がいますが、彼は……」のように、1回目は「夫」を使い、以後「彼」で通す手もあります。いくつか選択肢を用意しておいてはどうでしょう。