その物件には“ある過去”があった……
そうした、社会が変わる契機になったことも印象深いのですが、この事件が起きた物件には、もう一つ特殊な点がありました。実は、そのマンションが建っている土地では、数年前にも火事で人が亡くなっていたのです――。
その火事の後に建て直されたマンションで、今度は別れさせ屋による殺人事件が起きてしまいました。偶然の一致と言えるのかもしれませんが、そこは周囲に事故物件はほとんど存在していない、治安の良いエリアです。また、全く同じ土地で、建て直し前後の住宅がともに事故物件となってしまった例は、私はこれ以外に知らないのです。
記録を続けることで事故物件の“濃淡”が見え始めた
こうした事例は、何年ものスパンで事故物件を観察し続けることで、初めて明らかになります。私が「大島てる」を創設してから、来月(令和2年9月)で満15年になりますが、この期間にちょうど事故物件のサイクルが一周してきた感があります。
甲子園ではありませんが、「5年ぶり3度目」「10年ぶり2度目」というような、事故物件を示す“炎アイコン”が重なる場所が見えてくるようになったのです。「ずっと記録していたら、日本中が事故物件だらけになるぞ」とよく言われるのですが、「ここでは1人しか亡くなっていないけど、ここでは10人亡くなっている」というような、いわば事故物件の“濃淡”は、この活動を続けていくことでよりはっきり見えてくるのではないかと思います。
ただ私には、その濃淡がなぜ生まれるのか、はっきりとした説明はできません。治安の悪い地域でもないのに、危険な立地でもないのに、なぜか炎アイコンが重なってしまう。これからも、そんなケースに出会ってしまうのでしょう。