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この苦しさを乗り越えた先に

 昨年8月に右膝の手術を受けたというところでも、僕の現役時代と重なります。

 手術後にベッドで横になっているときは、毎日不安でした。もう走れないんじゃないかな、プレーできないんじゃないかな、ということばかり考えてしまっていました。

 そんなとき、リハビリテーションのおじいちゃんおばあちゃんから「膝痛いのに大変ねぇ」「頑張ってね、応援してるよ」というあたたかい言葉をもらって、気持ちが楽になったのを覚えています。あとは、リハビリに来ている子どもたちもたくさんいたので、自分がまた活躍するとこで良い刺激を与えられたらいいなとも思えました。

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 極端に言えば、半月板損傷というのは、アキレス腱や靭帯の故障に比べたら、大きなものでないです。なので、そこはどうにか割り切って、気持ちを腐らせずに練習に取り組んでいました。

現役時代の梵英心 ©文藝春秋

 広輔の守備の動きなどを見ている限り、あまり違和感はありません。ですが、プレーしていて全く気にならないという状態ではないと思います。感覚的に、本人はそこまで気にしていなくても、体は痛いときのことを覚えているんです。それで勝手に制御をかけてしまうというか。走っているつもりでも走っている感覚がなかったり。踏み込んでいるつもりでも、体がストップをかけて踏み込めていなかったり。そういうことが僕自身あったので、それをなくすための取り組みに苦労しました。

 それでも、故障があったからこそ気が付くことができたこともありましたし、これまでと違った角度で野球に関して見ることができるようになりました。

 年齢もまだ31歳と、野球選手としては一番良いとき。この苦しさを乗り越えることができたら、必ずまた活躍できる未来が来るはずです。今は数字にはとらわれないように。そして、チームのためはもちろんだけど、自分のために頑張ってもらいたいですね。

 そして、現役時代はライバルというポジションというのもあり、プライベートで一緒に食事に行く機会というのはありませんでした。なので、できることなら、そのうち一緒にテーブルを囲んでゆっくり野球の話をしたいですね。

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