8月中旬、栗原にインタビューをする際に映像を見返していたところ、そのポーズを繰り返していることに気づく。インタビューの時に、「○○ポーズ」と名前を付けてもらおう。取材日に栗原に訊ねると、自ら「ケバブポーズです」と回答した。
なるほど、これは面白いと感じたUディレクターは球団の広報担当者に「これって商品化できるんじゃないですか」と打診。もともと球場グルメに熱心なホークスとすれば、願ってもない言葉だった。しかも12球団屈指の豊富な選手メニューを揃えながらも、栗原選手メニューはゼロだったことも後押しとなった。
しかし、クリアしなければならない課題が一つ。どの店舗に任せるかはともかく、ケバブは特殊な調理方法を要するため、必要な器具など当然持ち合わせていなかったのだ。
ただ、これを何とかしてしまうのが、ホークスの驚きのスピード感だ。この話が浮上してからまもなく、飲食担当部門の責任者が話をつけてケバブを調理するためのマシンを購入する運びとなった。
通常ならば翌シーズンからとなりそうなところを、シーズンの終盤戦にどうにか間に合わせたというわけだ。「これには驚きました」とUディレクター。ただ、それ以上に皆がびっくりしたのが「くりケバ」の反響だった。
想像を大きく上回る人気メニューに
初日は200食完売を目指して準備をしたが、冒頭でも記したように開場直後から長蛇の列ができてしまった。そこで急きょ追加をして300食近くを売り切ったという。ちなみにある程度売れる商品でも100食程度だというから、破格の数字だった。
翌日からは当初の倍程度を準備。これも瞬く間に売れてしまい、発売した最初の3連戦では計1200食以上が売れたという。
ちなみに、栗原選手本人も自身初のプロデュースメニューということで張り切って、具材やソースなどは自ら選び、試行錯誤して作った渾身のメニューとなった。
発売から4日後、ホークスは見事に3年ぶりとなるリーグ優勝を果たした。栗原選手も歓喜の輪の中で、とびっきりの笑顔を浮かべていた。プロ6年目にして初の開幕スタメンに座り、いきなりサヨナラ安打を放って始まった今シーズン。11月5日現在、ペナントレースは残り1試合まで来た。目標にしていた全試合出場は叶わなかったが、チームでは柳田悠岐に次ぐ117試合に出場し、打率245、17本塁打、73打点の成績を残してみせた。
4番打者に座った試合もあった。打てずに苦しんだ時期もあった。だけど、それも乗り越えて、勝負強い打撃で再び自信を取り戻した。
もう来週末にはクライマックスシリーズが始まる。レギュラー格として初めて臨むポストシーズンも、これまでと同じように「楽しく、ワクワクしながら」グラウンドで輝きを放ってくれるに違いない。PayPayドームに足を運ぶチャンスがある方は、ぜひ「くりケバ」をお供に、ホークス4年連続日本一への戦いを堪能してみてはいかがだろうか。
◆ ◆ ◆
※「文春野球コラム ペナントレース2020」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/41266 でHITボタンを押してください。
この記事を応援したい方は上のボールをクリック。詳細はこちらから。