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トランプ支持とコロナデマを生む「Cアノン」筆頭…反共気功集団”法輪功”セミナー潜入記

『現代中国の秘密結社 マフィア、政党、カルトの興亡史』より #1

2021/02/06
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打倒共産党スローガンを紙幣にスタンプ

「現在も法輪功の修煉者が最も多いのは中国国内です。私の親族の家が、迫害を受けた修煉者のたまり場になっていたこともありました。投獄されて薬物を注射されたり、骨折しても放っておかれたりして、身体が傷ついた人たちです。身体のダメージは法輪功の煉法によって回復できますが、壊れた心はなかなか戻りません」

 また、彼女は中国国内の修煉者たちについてこうも言う。

「修煉は屋内でこっそりおこなっています。ほかに「法輪大法好」(法輪功は素晴らしい)、「三退保平安」(中国共産党系の組織から脱退しよう)といったスローガンを紙幣にスタンプして市中に流通させたり、法輪功のウェブサイトにアクセスするQRコードを印刷した紙を図書館の本に挟んだり、そういった紙をタクシーの後部座席のポケットに放り込む人もいます」

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 キャッシュレス化が進む近年の中国では紙幣に触れる機会が減ったが、反党スタンプが押された一元や五元などの小額紙幣は、中国で日常生活を送ったことがある人ならばおなじみだ。団地やマンションの共有スペースや、下町の電柱などにこっそりと貼られた法輪功のシールも、そう珍しいものではない。

こっそりと現体制の転覆を訴え続ける

 中国は監視社会のイメージが強い。だが、中国人は自分に直接的な被害がない限りは他人の行動に無関心であり、自分のマンションに法輪功住民が住んでいても放っておく人が多い。ゆえに法輪功は社会の片隅で隠れ暮らし、顔の見えないメンバーたちがこっそりと現体制の転覆を訴え続けている。

 日本の法輪功は、体験取材を受け入れてくれるくらいにはオープンな組織だ。しかし、中国国内における彼らは、「秘密結社」的な存在として活動をおこなわざるを得ない。

2019年6月27日、ベトナムのハノイ市内で出会った法輪功の中国人メンバー。中国人観光客に法輪功の正当性を訴えていた(著者撮影)

 法輪功は中国に多少関心がある人ならば必ず目に入る存在なのだが、その政治的主張や『大紀元』などの傘下メディアのアクの強さ(当事者に悪気はないのかもしれないが、結果的にフェイク・ニュースや陰謀論の流布に加担していることが多い)ゆえに、中国報道の従事者たちからは距離を置かれがちだ。しかし、私はそれゆえに、彼らについて知ってみたいと考えた。